【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】重要イベントの谷間、決算発表もピークアウト

2014年5月11日 19:49

印刷

記事提供元:日本インタビュ新聞社

(5月12~15日)

■ウクライナ情勢を睨みながら全体として材料難の中で下値固めが焦点

  来週(5月12日~16日)の株式・為替相場は、重要イベントの谷間となり、主要企業の3月期決算発表が実質的にほぼピークアウトする中で、全体としてはやや材料難となりそうだ。政府の成長戦略に法人税実効税率の引き下げが明記される見込みとの報道にも反応が鈍いだけに、大勢としてはレンジ相場が継続して個別物色の展開だが、ウクライナ情勢の緊迫化、消費増税の影響、15年3月期の企業業績見通しに対するアナリストの投資判断の変更状況などを睨みながら、日経平均株価1万4000円台での下値固めが焦点だろう。

  前週(5月7日~9日)の日本株は4連休明けの7日に大幅下落し、その後の反発力も鈍い展開だった。主要株価指数の週間騰落率を見ると、日経平均株価は257円92銭(1.79%)下落して週末9日の終値は1万4199円59銭、TOPIXは16.97ポイント(1.44%)下落して週末9日の終値は1165.51だった。

  2日の米4月雇用統計で非農業部門雇用者増加数が市場予想を大幅に上回ったが、その後も米10年債利回りが低下して為替が1ドル=101円台とドル安・円高方向に傾き、6日の米国株式市場でダウ工業株30種平均株価が前日比129ドル53セント(0.79%)下落したことも受けて、7日の日本株は日経平均株価が前日比424円06銭(2.94%)安、TOPIXが前日比30.47ポイント(2.58%)安と大幅下落した。その後8日と9日は上昇したものの反発力の鈍い展開だった。ウクライナ情勢の緊迫化も警戒されたようだ。

  8日の取引終了後に注目のトヨタ自動車<7203>が決算を発表し、15年3月期営業利益見通しを前期比微増ながらも最高益更新見通しとした。これを受けて同社の9日の株価は売りが先行したものの、すぐに前日比プラス圏に切り返した。15年3月期営業利益見通しは市場予想を下回ったが、円安進行一服などで期初時点では保守的に前期比減益見通しを公表する可能性も警戒されていただけに、前期比微増益見通しがある程度の安心感に繋がったようだ。ただし市場全体のムードを一変させるまでには至らなかった。

  来週の日本株は、前週末9日の米国市場でダウ工業株30種平均株価が終値で1万6583ドル34セントと史上最高値を更新(取引時間中の史上最高値は4月4日の1万6631ドル63セント)したこと、為替が1ドル=101円80銭~90銭近辺とややドル高・円安方向に傾いたことを好感して買い優勢でのスタートとなりそうだ。ただし大勢として日経平均株価1万4000円~1万5000円近辺のレンジ相場に大きな変化はないだろう。

  主要小売各社の4月の売上動向などで、総じて消費増税後の反動減がほぼ想定内の水準であり、個人消費に対するマイナス影響が週を追って縮小傾向であることは確認された。来週発表される主要小売各社の4月売上動向でも、こうした動きが確認されそうだ。そして主要企業の15年3月期業績見通しでも、消費増税によるマイナス影響に対して楽観的な見方が優勢だ。

  消費増税に伴う駆け込み需要の反動減や消費マインドの低下など、景気や企業業績へのマイナス影響に対する警戒感は根強いが、前週までに15年3月期業績見通しを公表した主要企業に関しては、決算内容を精査したアナリストレポートが来週あたりから出始める。消費増税によるマイナス影響をどのように判断するかも注目点だろう。消費増税のマイナス影響が想定より小さいとして強気の業績見通しを維持すれば、銘柄によってはある程度の安心感に繋がる可能性があるだろう。

  海外要因としては、引き続きウクライナ情勢が撹乱要因となりそうだ。11日にドネツク州で実施される住民投票後は、5月25日予定のウクライナ大統領選に向けて米ロの外交的駆け引きが続き、ウクライナ政権側と親ロシア派の衝突が激化する可能性もあり、それに伴ってリスクオフの動きを強める可能性があるだろう。

  中国の景気減速やデフォルト(債務不履行)に関しては、もはやサプライズとはならないだろう。来週は13日に中国4月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資の発表が予定されている。結果次第では売り仕掛けの材料とされやすいが、影響は一時的・限定的だろう。ただし中国を巡る地政学リスクや、ルー米財務長官が11日~13日に訪中して中国人民元相場の改革を求めるとしていることなどが波乱要因の可能性もあるだろう。

  日経平均株価を日足チャートで見ると、1万4000円近辺の下値では買いが入って下げ渋るが、一方で上値が切り下がる形の三角保ち合いの様相を呈してきただけに、下放れの動きに注意が必要となる。目先的には早期に25日移動平均線を回復して、4月21日の取引時間中に付けた1万4649円50銭を上抜けるかが焦点となる。

  株式市場での物色動向としては、14年3月期業績修正や15年3月期見通しなど、業績修正・決算発表に反応して個別物色の動きが継続する。ただし、好業績を材料視して発表直後に買い上げても、一転して資金の逃げ足が速くなる銘柄も多い。一方では、市場予想を下回ったとして発表直後に売り叩かれても、売り一巡して切り返しの動きを速めている銘柄も多いため、投資好機となりそうだ。

  為替については、15年春~夏に向けて徐々に米FRB(連邦準備制度理事会)のゼロ金利政策解除が視野に入るだけに、基本的には米10年債利回りが一段と低下する可能性は小さいというシナリオが基本だ。しかしイエレン米FRB議長が議会証言で労働市場や住宅市場の回復に懸念を示したこともあり、緩和的な金融政策の長期化観測が一段と高まっている。一方で日銀による追加金融緩和に対する期待感は後退している。

  米4月雇用統計を受けても米10年債利回りが上昇しなかった状況を考慮すると、ドル・円相場は概ね1ドル=101円台後半~102円台前半での膠着状態が続きそうだ。ユーロに関しては、8日のECB(欧州中央銀行)理事会後のドラギECB総裁の発言を受けて、次回6月のECB理事会での追加利下げ観測が高まった。当面はユーロ売りが優勢の流れだろう。

  その他の注目スケジュールとしては、12日の日本3月および13年度国際収支状況、日本4月景気ウォッチャー調査、米4月財政収支、13日の独5月ZEW景気期待指数、米4月輸出入物価、米4月小売売上高、14日の日本4月企業物価指数、ユーロ圏3月鉱工業生産、米4月卸売物価指数、15日の日本1~3月期GDP1次速報、日本4月消費動向調査、ユーロ圏1~3月期GDP速報値、米4月消費者物価指数、米4月鉱工業生産・設備稼働率、米5月住宅建設業者指数、米5月ニューヨーク州製造業業況指数、米5月フィラデルフィア地区連銀業況指数、16日のユーロ圏3月貿易収支、米4月住宅着工件数、米5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。

  その後は、5月18日の中国4月新築住宅価格、20日~21日の日銀金融政策決定会合、21日の日本4月貿易統計、22日の中国5月製造業PMI速報値(HSBC)、29日の米1~3月期GDP改定値、6月4日~5日のG7首脳会議、英中銀金融政策委員会、5日のECB理事会と記者会見、6日の米5月雇用統計、12日~13日の日銀金融政策決定会合、17日~18日の米FOMC(連邦公開市場委員会)と記者会見などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

【関連記事・情報】
【編集長の視点】BS11は反落も2Q好決算と記念増配を手掛かりに内需割安株買いが交錯(2014/05/07)
【今日の言葉】決算発表本格化、15年3月期に期待と不安(2014/05/02)
【編集長の視点】サトーHDは連続の最高純益更新・増配で消費増税関連の本命株人気を再燃余地(2014/05/02)
【木村隆のマーケット&銘柄観察】業績見直しをベースに、少しずつ底堅さを増す展開に(2014/05/03)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

関連記事