【小倉正男の経済羅針盤】日米首脳会談--外交に非礼は禁物

2014年4月28日 09:30

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

■TPPは「お疲れ様」交渉

  日本の企業社会では、いつからか「お疲れ様」という言葉が乱用されるようになっている。仕事からの帰りはもちろん「お疲れ様」--。最近ではそれだけではない。社内の廊下などでのすれ違いの挨拶も「お疲れ様」。ほとんどあらゆる局面で、「お疲れ様」が使われている。

  ところで日米首脳会談、なかでもTPP(環太平洋経済連携協定)はなんともいえないものになった。徹夜の攻防、という交渉になったというのだが、その中身は判然としない。

  進展があったと見る向きもあるが、実質何もなかったという見方もある。手ぶらで帰したのか、お土産はあったのか。中身はともあれシゴトはした、ということか。まさに、「お疲れ様--」交渉である。

■「お・も・て・な・し」どころか「ぶ・ち・こ・わ・し」

  おまけに麻生太郎副総理など、「オバマが国内でまとめきれる力はないだろ。協議がまとまったとしても米国の議会で通る保証はない」と解説--。この談話は、オバマ大統領が、韓国に向けて飛び立つ直前、まだ日本に滞在中に出された。

  これでは、「お疲れ様」というか、なんといったらよいか。そう、「台なし」である。

  せっかく安倍晋三総理や皇室までお鮨や抹茶アイスで、「お・も・て・な・し」をしたというのにまるで「ぶ・ち・こ・わ・し」ではないか。

  これが翌日、韓国でのオバマ大統領の「慰安婦」についての発言につながったという憶測はもちろんのことまったく根拠がない・・・。

■ドゴールへの「侮り」

  だが、外交に非礼は禁物である。

  1966年、ドゴールはフランス軍をNATOの統合軍事指揮下から撤収させた。ドゴールはアメリカへの極度の依存を嫌い、ついには独自の核抑止力を持つ決断をした。NATO軍司令部は、パリを追われる事態になった。

  これには伏線があった--。ドゴールが、以前に訪米した時に、「禍根」を残したといわれている。

  ドゴールが、はじめてアメリカに着いた時にアイゼンハワー大統領が空港に出迎えなかった。代理で出迎えたのは若いニクソン副大統領だった--。これがドゴールの矜持を痛く傷つけたというのである。

  些細なことにも見えるが、少なくともドゴールには些細なことではなかった。

  ドゴールは、NATO、つまりはアメリカの核抑止力に頼っていることが、この「侮り」の根源だと判断した。軍事力を他国に頼っているから、こうした侮辱を受けることになる、と。

  取り越し苦労かもしれないが、あえて指摘しておくことにする--。

  外交で非礼をすると、とんでもないことになりかねない。TPP交渉の中身や結末がどうあれ、些細なことが「禍根」を生むようでは何のための首脳会談か、ということになるのではないか・・・。

(経済ジャーナリスト・評論家、『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』(PHP研究所刊)など著書多数)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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