パンチ工業の第二幕目と平行して東証1部への市場変更株に新年度相場での新展開を期待=浅妻昭治

2014年4月1日 12:28

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  今年の新規株式公開(IPO)市場は、やや雲行きが怪しい。3月28日までに12銘柄がIPOされたが、初値が公開価格を上回って形成(勝ち)されるか、下回った(負け)で判定される勝負は、10勝2敗と昨2013年通年の52勝1敗1分の高勝率から後退し、平均初値倍率も、70.9%と昨年の2.0倍から大幅にダウンさせている。昨年は、12銘柄がIPOされた段階では、平均初値倍率が2.2倍とスタートダッシュに成功したことに比べても、様相を異にしているのである。

  個別銘柄でみても、もっとも市場の注目を集めた介護用のロボットスーツを研究開発・製造・販売するCYBERDYNE <7779> (東マ)は、初値形成は2日目だろうとする下馬評に対して、上場初日に公開価格を2.3倍上回る8510円で初値をつけ初値比ストップ高の1万10円まで買い進まれたまではよかったが、上場2日目には、ストップ安と売られるなど荒い値動きで、前日31日も上場来安値7490円近辺での売り買いが交錯した。

  このIPO市場の動向をどう捉えるかは、判断が分かれるところだろう。もともとIPO市場は、個人投資家主導の市場であり、きょう1日からの消費税増税を控えて個人投資家がリスク回避姿勢を強めたとの見方もある一方、きょう1日の名実ともの新年度相場入りで、機関投資家の新規資金流入による出直り期待で主力株にシフトしているとの観測もしきりである。

  新年度相場入りとともに、相場付きも活躍銘柄もガラリと変わることはかつてはよくみられたことである。そこで当コラムでは、このサバイバルを期待して、新たな銘柄群に注目してみたい。今年1月以来、上場市場を変更した銘柄である。

  今年1月以降、新興市場から東証第2部へ、新興市場や東証第2部から東証第1部にそれぞれ市場変更が承認された銘柄は、4月3日に東証第1部に上場予定の寿スピリッツ <2222> (東2)、同4日に指定替えが予定されている東洋ビジネスエンジニアリング <4828> (東2)まで37銘柄に達しており、このうち24銘柄が東証第1部への指定替えである。

  この24銘柄の指定替え承認に伴う株価反応は、ストップ高と歓迎高した銘柄がある一方、指定替えとともにファイナンスを実施した銘柄が、4銘柄もあって、強弱材料が綱引きして限定的な株価反応にとどまったケースもあるなどさまざまである。前日31日の大引け値現在で、承認日の株価を上回っている銘柄は、13銘柄とようやく過半数となっており、必ずしも指定替えが、東証株価指数(TOPIX)算入開始によるTOPIX連動型ファンドの買い需要発生などの需給好転材料と評価されたわけではなく、逆に織り込み不足の可能性を示唆しているともいえるわけだ。

  そして実際にこの低調な株価推移が、需給好転の織り込み不足を表しているのかどうか判断するのに格好な指標株があるのである。3月14日に東証第1部に指定替えされたパンチ工業 <6165> である。

  同社株は、2012年12月に公開価格560円でIPOされた時も、「小さく産んで大きく育てる」IPO株投資の申し子的な存在として注目された。同社株のIPO時の初値は、公開価格を下回る530円でつけた。しかもこれは、その後、2012年、2013年と54銘柄が連続でIPO株が公開価格を上回って初値を形成する連勝記録が始まる前の最後の公開価格割れの初値形成だったのである。株価が、そのまま推移したとしたら、同社は単なる「ダメIPO株」の烙印を押されるところだった。ところが、同社株は、昨年後半からは様変りの株価推移を示し、今年1月には上場来高値1400円まで買い進まれ、公開価格に対して実に2.5倍と大化けし一躍、「小さく産んで大きく育てる」IPO投資の教科書的な銘柄との評価に一変したのである。

  これがパンチ工業の第一幕目だが、実は同社は、いまこれに続く第二幕目を迎えている。同社は、東証第2部から第1部に指定替えされたが、この指定替えに際して新株式発行(発行価格1057円)・株式売出しを実施し、株価は、これを嫌って公開価格を下回り年初来安値750円にあと140円と迫るまで売り込まれてしまったのである。この第二幕目も、この後、第一幕目と同様に「小さく産んで大きく育てる」結果につながることになれば、市場変更株への注目度は一段のアップすることになるはずである。

  そこでこのパンチ工業の株価推移と並行して、東証第1部に市場変更した24銘柄に的を絞ってアプローチしてみたい。24銘柄には、業績を上方修正した銘柄や、投資採算的に割安を示唆する銘柄が多く、新年度相場で、人気を再燃させることを期待したいのである。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

※この記事は日本インタビュ新聞社=Media-IRより提供を受けて配信しています。

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