CEATEC AWARD 2011でロームの屋内測位技術が最高賞受賞

2011年10月14日 11:00

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記事提供元:エコノミックニュース

 近年、位置情報サービス(Location Based Service)関連がスマートフォンの普及により、急激な成長を遂げている。日本ではジオメディアとも呼ばれており、ネットと社会をつなぐ情報システムとして重要なポジションに位置づけられている。

 現在はGPSの利用が一般化し、屋外における様々な位置情報サービスが提供されている。GPSの利用が困難な建物内や地下においても屋外と同様なサービスの需要が期待されており、GPS信号を屋内で発信する方式や、通信用の無線LAN基地局から発信された電波を測位に流用する方式など、様々な測位技術の研究が進められている。しかし、より局所的な場所の測位を必要とする場合においては、十分な精度を得るために多数の発信機を設置する必要があり、そのような場合は発信機の電源増設にかかるコストが高いなど、実用化には多くの課題が残されているのが現状であった。

 そのような現状を打開すべく、立命館大学とローム、電通国際情報サービス(以下ISID)の3者は、周囲の環境から室内光発電や振動発電などにより、その場でエネルギーを収穫(harvest)して駆動させるエネルギーハーベスティング方式による稼働が可能で、高精度な屋内測位インフラ「Place StickerR」(プレースステッカー)」を開発した。

 「Place StickerR」」は、スマートフォンなどの携帯端末を保有するユーザーに対して位置情報サービスを提供する技術。無線LAN基地局方式を採用しており、現在普及しているスマートフォンで稼働する。また、IEEE802.11に準拠した無線LANのビーコンを低出力で送信することにより、従来より狭い間隔で設置できるため、これまで無線LAN基地局方式では実現が厳しかった3メートル以内の測位も可能。国土交通省の「平成22年度移動支援サービス技術研究支援事業」において、大阪・梅田周辺地下街で実施した実証実験では、10mおきに「Place StickerR」を設置し、3mの測位精度を実現、今後は、1メートル以内の測位精度を目標として開発を進めていくという。

 さらに通信インフラとしてではなく屋内測位インフラとしてのみ機能させることにより、低出力のビーコン送信に限定し、低消費電力化を実現。また、ロームによる色素増感型太陽電池(DSC)の室内光下での発電効率の改善により、屋内においてもエネルギーハーベスティング方式による駆動を可能とし、外部からの電源供給を不要にしている。その結果、これまで無線LAN基地局方式で必要だった電源施設工事のコストを省き、電気代不要で稼動させることが可能となっている。

 立命館大学とISIDはこれまでも産学連携活動の一環として、2009年からユビキタス環境に関する共同研究を実施。「Place StickerR」はその枠組みで研究開発が始まった。今回のプロジェクトで立命館大学は測位アルゴリズムの開発を行い、またISIDは「Place StickerR」のプロトタイプ開発、アプリケーション作成、及び位置測位サービスインフラの構築。またロームは、将来のエネルギーハーベスト時代に対応するため、屋内でも発電が可能なデバイスとして2009年から色素増感型太陽電池(DSC)の開発をスタートし、室内光下における発電効率の改善と製造技術の確立に取り組んでいる。今回のプロジェクトでは、先進的なDSCの高効率化、ならびに自立電源モジュールをはじめとする電源モジュールの開発、及び「Place StickerR」の実装を実施。 今後も3者は、エネルギーハーベスティング方式による屋内測位インフラ「Place StickerR」を活用した測位技術のさらなる向上および一層の低コスト化に取り組み、実用化に向けての研究開発を推進する構えだ。

 なお、今回の成果は幕張メッセ(千葉県幕張市)において開催されたアジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展CEATEC JAPAN 2011のローム展示ブースにてデモンストレーションを行い、注目を集めていた。その結果、CEATEC JAPANに出展される製品・サービスの中から、優れた展示・発表に対し、審査委員会や取材メディアの選考により受賞対象を決定するアワード「CEATEC AWARD 2011」(省エネ・創エネ・蓄エネ部門)の最高賞・グランプリを受賞した。

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