大成建設とイクシー、「触覚」「力加減」伝える遠隔操作システム開発へ

2017年7月21日 19:39

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(写真: 大成建設の発表資料より)

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 大成建設は20日、イクシーと共同で力触覚伝達技術を利用した遠隔操作システムの開発に着手したことを発表した。労働集約型作業の省力化を目標に、6月よりイクシーのロボットアームと力触覚グローブ「EXOS」を組み合わせたシステムの構築を開始しており、17年度にプロトタイプの完成、18年度にシステムの実用化を目指している。

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 力触覚伝達技術とは、物体の硬さや軟らかさなどの「触覚」や物体への「力加減」の情報を双方向に伝達する技術。これまで「視覚」や「聴覚」という双方向伝達技術は遠隔システムにおいて確立されていたが、この技術に新たに「触覚」が加わる形となる。

 生産現場では自動化ロボットやAIの導入により効率化が図られているが、一方で人の手に頼ざらざるを得ない労働集約型作業を必要とする業務も依然あり、非効率化や人手不足など多くの課題が残されていた。とりわけ作業員による手作業において、「力加減」は現在のロボット技術では再現性において困難とされていた。

 大成建設とイクシーはその再現性を実現すべく、力触覚伝達技術を利用して遠隔地から対象物の硬さ、軟らかさを感じながら操作することのできる遠隔操作システムの開発に着手した。

 システムが実用化されれば、時間や場所を問わず作業が可能となり、労働集約型作業に対して多様なパターンでの適用ができる。災害現場など作業員が立ち入ることのできない特殊な環境下においても「手加減」を伴う遠隔操作を実施できることからその実用化は大いに期待されている。

 イクシーは大手家電メーカー出身者3名とデザイナーが立ち上げたベンチャー企業。ロボット義手の開発・普及をメインに取り組んできた。今回のシステムにおいて採用される「EXOS」は力触覚提示デバイスとして、モーターと外骨格機構の組み合わせにより、手が物に触れたときに生じる反力を再現できる。デバイスを手に装着することで、バーチャルな物体に触れたときの感触を得ることができるわけである。

 ロボットへの遠隔操作のほか、医療現場でのリハビリテーションやVRゲームでの活用でも期待されている。これまで触覚デバイスといえば振動を用いたものが主流だったが、関節の角度を動かすことで、力を伝え、触覚を再現できるという点においては革新的である。

 大成建設も2月に、ヘッドマウントディスプレイを用いて重機を遠隔操作できるシステム「T-iROBO Remote Viewer」を開発するなど、遠隔から安全で効率的な作業が求められるシステムに注力してきた。今回発表の遠隔操作システムも食品製造工場や医薬品製造工場、集客施設など幅広い用途においての活用が期待できることから、その実用化には期待をしていきたい。

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