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サッカーボールの縫い目の位置は、飛翔軌道に大きな影響を与える―筑波大・洪性賛氏ら
PIVを用いて可視化されたサッカーボール周りの空気流れ。縫い目(赤い矢印)が2つの場合(a)、剥離点は約120°に位置(太い黄色の矢印)する。しかし、剥離が起こる所 (120°)に縫い目が位置する(b)と、その剥離点が少し後に移動(125°:太い黄色の矢印から赤い矢印の位置への変化)する。また、縫い目の間隔が比較的狭い(50mm)場合(c)、seam1で1回剥離が起こるが、直ぐ再付着しseam2後方で完全に剥離(140°)する。さらに、縫い目が3つある場合(d)、seam1とseam2で再付着が起こり、剥離点を最も後方(145°)に移動する。(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]
筑波大学の洪性賛研究員らの研究グループは、サッカーボール表面を構成している縫い目の位置が、サッカーボールの飛翔軌道を決定する大きな要因の一つになっていることを明らかにした。
近年、サッカーボールは、ボールパネルの形状やデザインなどが大きく変ってきている。2006年に行われたドイツワールドカップの公式球であるチームガイストボールはパネル数14枚で構成されており、従来のサッカーボールの典型的な形である六角形パネルと五角形パネルの32枚のパネルボールから大きく変化した。そして、2010年南アフリカワールドカップ大 会では8枚のパネルで制作されたジャブラニ、2014年ブラジル大会では6枚のパネルで制作されたブラズーカが使用された。
今回の研究では、2013年FIFAコンフェデレーションズカップの公式球であるカフサを用いて、パネルの向きが抗力、揚力に及ぼす影響を検討すると共に、ボール縫い目の位置変化から生じる空気の流れの変化を PIV(Particle Image Velocimetry)計測システムで可視化し、ボール縫い目の位置が、空気の流れを変えるメカニズムや、実際のサッカーボール飛翔軌跡への影響を明らかにした。
その結果、サッカーボールの表面にある縫い目は、境界層と呼ばれる空気の流れの層が表面から剥がれて後流渦を作る(これを「剥離」と呼ぶ)ことを促すが、位置によっては、ボール表面の流れに戻る現象(これを「再付着」と呼ぶ)が起こり、結果的に剥離点を後方へ移動させる働きがあることが明らかになった。
この剥離点の位置の変化は、ボール後方の空気の流れ(後流)の渦構造に影響を及ぼすとともに、揚力、抗力に作用し、飛翔するボールの軌道に影響を与えていることが分かった。これらの結果を総合すると、サッカーボール表面を構成している縫い目の位置が、境界層の剥離点に大きな影響を与え、サッカーボールの飛翔軌道を決定する大きな原因の一つになっていると考えられる。
今後は、本研究で得られた知見が、サッカーボールの飛翔特性の理解、今後のボールの研究・開発やデザインに活用できると期待されている。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Visualization of air flow around soccer ball using a particle image velocimetry」。
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