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複雑な運動パターンに対応する大脳領域のマップを得ることに成功―NIBB・平理一郎氏ら
(A) 実験の模式図。オプトジェネティクスの手法により、大脳運動野にパルス状の光刺激を施し、運動パターンを誘発した。(B)光刺激によって誘発される、離散的な運動(左)とリズミカルな運動(右)の例。高速ビデオカメラを用いて撮影を行い、右前肢の軌跡を解析した。 (C) 従来のマウスの大脳皮質の領域区分。(D)本研究により新たに得られた、リズミカルな運動(緑)と離散的な運動(マジェンタ)が誘発される脳領域のマップ。リズミカルな運動が誘発される領域が散在的な運動が誘発される領域に挟まれたサンドイッチ構造が確認できる。右のマップ上の小さな矢印は、誘発された運動の上から見た時の方向と距離を示している。(基礎生物学研究所の発表資料より)[写真拡大]
基礎生物学研究所(NIBB)の平理一郎助教らの研究チームは、マウスの大脳運動野領域を光で刺激することにより、走る、手を口に持っていくといった複雑な運動を司る大脳のマップを得ることに成功した。
大脳運動野は、その中のどの場所が手の動きに対応しているのか、あるいは足、口、目の動きに対応しているのか、といったことが詳細に分かっている。しかし、複数の体の部位を協調して動かす運動は、大脳のどこに対応しているのか明らかになっていなかった。
今回の研究では、神経細胞活動を青色レーザー光によって誘発させられる技術「オプトジェネティクス」を用いて、覚醒中のマウスの大脳皮質上で、場所・周波数・刺激時間を調整しながら様々な運動タイプを誘発させた。
その結果、右前肢の動きには「リズミカルな運動パターン」と「離散的な運動パターン」の2つが見られた。リズミカルなパターンは、しばしば実験者の目には走っているように映り、離散的なパターンは口に手を伸ばして何かを食べているかのような動きに見えた。
なお、これらの運動を大脳皮質上にマップすると、二つの離散運動誘発領域がリズム運動誘発領域を挟み込んだ、サンドイッチ構造が存在することが明らかになった。さらに、他の体の部位の動きも同時に観察したところ、歩行様運動、前肢-口運動、防御様運動と、意味を持った運動パターンが少なくとも3種類見出された。
本研究成果は、目的志向性を持つ行為が大脳でどのように表現されているかという問題に手がかりを与えるものであると考えられる。
なお、この内容は「The Journal of Neuroscience」に掲載された。論文タイトルは、「Distinct functional modules for discrete and rhythmic forelimb movements in the mouse motor cortex」。
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