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紫黒米の原因遺伝子を特定、ブランド米を紫黒米にすることも可能に―生物研・及川氏ら
今回の研究では、紅血糯由来のKara4遺伝子の制御配列が、米粒の色を黒くするために必要であることを遺伝子組換え実験で確認した。灰色部分は、コシヒカリと紅血糯に共通する配列。コシヒカリと紅血糯のKara4遺伝子もほぼ同じ配列。(農業生物資源研究所と富山県農林水産総合技術センターの発表資料より)[写真拡大]
農業生物資源研究所の及川鉄男氏、井澤毅氏らによる研究グループは、紫黒米品種の黒米形質(お米が黒くなる性質)の原因となる遺伝子を特定した。この遺伝子を白いお米の品種に導入することで、味はそのままで紫黒米にすることが容易になるという。
古代米として知られている紫黒米は、米粒に抗酸化作用があるアントシアニン色素や、ビタミン、ミネラルも多く含むため、美容や健康に良いとされている。
今回の研究では、20種類以上の古代米と、比較するための白米・赤米、約30種類について、お米を黒くする遺伝子「Kala4遺伝子」の周辺のDNA配列を調査した。その結果、紫黒米の原因配列は、Kala4遺伝子のタンパク質を作る配列ではなく、その上流にある遺伝子の働きを制御する配列に変異があることを突き止めた。
実際にこの制御配列が紫黒米の原因配列であることを確かめるため、遺伝子組換え技術を利用してコシヒカリ由来Kala4遺伝子の制御配列部分を、紫黒米の1種「紅血糯(こうけつもち)」由来の制御配列と取り替えたお米を作ったところ、紫黒米になることが確認できた。さらに、Kala4遺伝子の機能を調べ、果皮でアントシアニン合成にかかわる複数の遺伝子を活性化する、転写因子の遺伝子であることが明らかになった。
また、紫黒米の起源はイネが栽培化された後、熱帯ジャポニカ種で起こった突然変異であることが分かった。突然変異は、Kala4遺伝子の働きを制御する配列に起こっていた。突然変異はその後、自然交配によりインディカ米(お米が細長い品種)にも移り、アジア地域に広がったことも分かった。
今回の研究で判明した、お米を黒くするために必要なKala4遺伝子の制御配列(約5,000塩基対)を、白いお米の品種に導入することで、既存の品種を紫黒米にすることが可能になる。食味のよいブランド米の味をそのままに、紫黒米に含まれる抗酸化物質等を含む健康に良いお米を育種できるという利点がある。
なお、この内容は「The Plant Cell」に掲載された。論文タイトルは、「The Birth of a Black Rice Gene and Its Local Spread by Introgression」。
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