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理研など、サッカーボール型分子「フラーレン」の超伝導発現メカニズムを解明
スーパーコンピュータによる理論計算で得られた相図(左)と実験で得られた相図(右)。理論計算の超伝導転移温度は実験値を10K未満の精度で再現している。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]
理化学研究所の酒井志朗研究員、有田亮太郎チームリーダーらの国際共同研究グループは、分子性固体として最高の超伝導転移温度を持つフラーレン固体の超伝導発現メカニズムを解明した。
炭素はダイヤモンドになったり、黒鉛になったりと、さまざまな形態をとるユニークな元素であり、60個集まるとサッカーボール状のフラーレン分子になることが知られている。この分子がさらに集まって結晶を作り、隙間にアルカリ原子が挿入されると絶対温度にして約40ケルビンの転移温度を持つ高温超伝導体となるが、その超伝導発現のメカニズムは解明されていなかった。
今回の研究では、フラーレン固体の超伝導に関わる低エネルギー電子状態を表す理論模型を構築する新しい方法論を開発し、スーパーコンピュータを駆使して大規模数値計算による解析を行った。その結果、結晶構造以外の実験情報は一切使わず、相図中の金属相、超伝導相、強相関絶縁相の相境界を誤差10K未満の高精度で決めることに成功した。
そして、超伝導相では、電子-格子相互作用(原子の振動)とクーロン斥力が協力的に働く特異的な状況にあり、これが高温超伝導発現の鍵になっていることが明らかになった。このメカニズムは、格子振動とクーロン斥力が競合しあう従来型の超伝導機構とは本質的に違うものだった。
今後は、超伝導転移温度を非経験的に計算できるようになることで、新しい超伝導体の設計へつながると期待されている。
なお、この内容は「Science Advances」に掲載された。論文タイトルは、「Unified understanding of superconductivity and Mott transition in alkali-doped fullerides from first principles」。
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