阪大、眼球運動の計測で発達障害(ADHD)を診断できる手法を開発

2015年7月1日 18:21

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眼球運動測定の様子(大阪大学の発表資料より)

眼球運動測定の様子(大阪大学の発表資料より)[写真拡大]

 大阪大学の喜多村祐里准教授らの研究グループは、子どもの精密な眼球運動計測を実現するための、非侵襲(生体を傷つけないような手技)かつ操作性に優れた測定システムを開発し、注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder)の子どもは、目の速い動き(サッカード眼球運動)を制御する脳機能に異常があることを発見した。

 注意欠陥多動性障害(ADHD)は不注意、衝動性、多動性などの症状を特徴とする発達障害の一つで、近年、診断基準の変更や成人ADHD治療薬の承認などの影響で有病率は急増している。

 今回の研究では、開発した測定システムを用いて、ADHDと診断された5歳から11歳までの患者37名に対して、注視点移動に伴う順行性サッカード運動とよばれる速い眼球運動の計測・解析を行った。その結果、対照群の定型発達児(88名)に比べ統計学的に有意(p<0.01)なギャップ効果(固視点が一瞬消失することによって反応潜時が短くなる現象)の減弱があることが明らかになった。

 これらの結果から、ADHDの子どもでは、脳内の眼球運動制御機構のうちで意識的に注視活動を維持したり、サッカード運動(目の速い動き)を起こしたりする経路または機能に何らかの異常があることが示唆された。

 今後は、今回の研究成果が、成人や乳幼児にも適用できる診断ツールへの応用や、薬物・行動療法の有効性判定に利用可能な生体指標の確立に繋がると期待されている。また、外見的にはなかなか判断されにくい疾病に対して、周囲の理解を促す意味でも、今回のような客観的・定量的な診断・評価手法の開発が貢献できると考えられる。

 なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。論文タイトルは、「Gap Effect Abnormalities during a Visually Guided Pro-Saccade Task in Children with Attention Deficit Hyperactivity Disorder」。

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