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光合成を“やめた”ラン科植物で、動物による種子散布を初めて確認―京大
(a)ツチアケビ植物体(花期)、(b)ツチアケビ植物体(結実期)、(c)ツチアケビ花茎につかまるウグイス、(d)ツチアケビ果実を摂食するヒヨドリ、(e)ヒヨドリに摂食されたツチアケビ果実、(f)ツチアケビ果実の切片、(g)ヒヨドリ糞中のツチアケビ種子、(h)ツチアケビ種子の切片(リグニン化した種皮がサフラニンで赤く染色されている)(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の末次健司特定助教らによる研究グループは、埃種子とよばれる非常に微細な種子を持ち、風による種子の散布を行うと考えられてきたラン科植物において、初めて動物による種子散布を発見した。
ラン科植物は、葉を展開するまでの間、菌根菌とよばれる菌類からの養分供給に依存して生育しており、およそ200種は一生涯に渡り菌から得て生育することで、完全に光合成をやめるという進化を遂げている。完全に光合成をやめてしまったツチアケビのようなラン科植物は、光合成を行う必要がないため、競争相手となる光合成を行う植物が生育できない非常に暗い林床に生育しているが、暗く風通しの悪い林床は、風による種子散布に適していないと考えられる。
今回の研究では、暗い森林に生育し、鮮やかな赤色の液果をつけるツチアケビに注目し、その種子散布様式を調べた。その結果、ツチアケビの果実は、ヒヨドリ、シロハラなど4種の鳥によって消費されていることが分かった。さらに、このうち最も主要な摂食者であったヒヨドリの糞を調べたところ、ツチアケビの種子は鳥の消化管内で損傷を受けず発芽能力を保っていることが明らかになった。
研究メンバーは、「植物が光合成をやめるという進化は、単なる機能の喪失ではなく、一見関係ないと思われる種子散布様式の変化まで促す可能性が示唆されました。今後も菌従属栄養植物の分類学的、生態学的研究を行うことで、植物が光合成をやめるという究極の選択をした過程で起こった変化を、一つでも多く明らかにしたいと考えています」とコメントしている。
なお、この内容は「Nature Plants」に掲載された。論文タイトルは、「Avian seed dispersal in a mycoheterotrophic orchid Cyrtosia septentrionalis」。
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