東北大、光からスピン流を生み出す新しい原理を発見

2015年1月13日 21:42

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(a)今回の実験に利用した素子の模式図。素子に可視光を照射すると、金微粒子中に励起された表面プラズモンを介して光とスピンが相互作用し、磁性ガーネットと白金の界面近傍にスピン流が生成される。このスピン流を起電力に変換することで、電気信号として観測した。(b) 走査型電子顕微鏡により撮影した金微粒子。直径100nm(ナノメートル)以下の金微粒子が光アンテナとして作用する。(c) 金微粒子近傍の電磁場分布のシミュレーション結果。可視光域の波長690nm近傍の光を照射すると表面プラズモン共鳴が生じるため、金微粒子の周りに局在した強力な電磁場が発生し(左図)、スピンの運動が励起される。表面プラズモン共鳴条件を満たさない波長500nmの光を照射した場合には、電磁場の増強効果は起こらない(右図)(東北大学などの発表資料より)

(a)今回の実験に利用した素子の模式図。素子に可視光を照射すると、金微粒子中に励起された表面プラズモンを介して光とスピンが相互作用し、磁性ガーネットと白金の界面近傍にスピン流が生成される。このスピン流を起電力に変換することで、電気信号として観測した。(b) 走査型電子顕微鏡により撮影した金微粒子。直径100nm(ナノメートル)以下の金微粒子が光アンテナとして作用する。(c) 金微粒子近傍の電磁場分布のシミュレーション結果。可視光域の波長690nm近傍の光を照射すると表面プラズモン共鳴が生じるため、金微粒子の周りに局在した強力な電磁場が発生し(左図)、スピンの運動が励起される。表面プラズモン共鳴条件を満たさない波長500nmの光を照射した場合には、電磁場の増強効果は起こらない(右図)(東北大学などの発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の内田健一准教授らによる研究グループは、特定の金属微粒子を含む磁石に可視光を照射することで、スピン(磁気)の流れを生成できる新しい原理を実証することに成功した。

 持続可能な社会に向けて、光・熱・振動などを利用する新しいエネルギー変換原理の創出が期待されている。一方で、エレクトロニクスの分野では、電子の流れだけでなくスピンの性質も利用する「スピントロニクス」が次世代電子技術の有力候補として注目を集めている。

 今回の研究では、磁性ガーネット(BiY2Fe5O12)薄膜の表面に白金(Pt)薄膜を接合した素子に、特定の波長の可視光を照射することで、強力な電磁場を発生させ、その電磁場によりスピンの運動を効果的に駆動させることに成功した。また、様々な対照実験やシミュレーションを行い、観測された信号は光が表面プラズモンを介してスピン流を励起する新しいプロセスによって生じていることを確認した。

 光とスピンの相互作用については、これまで半導体を用いて研究されてきたが、今回実証された効果は全く異なる物理原理に基づくもので、初めて絶縁体磁石における光-スピン流変換が可能になった。

 実際のデバイスで利用するためには大幅な効率向上が必要であるが、将来的には次世代の分散型発電・省エネルギー技術やスピンデバイスの駆動源に繋がると期待されている。

 なお、この内容は1月8日に「Nature Communications」にオンライン公開された。

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