8月5日に株価の大暴落をもたらした「疑心暗鬼」は、いつまで続くのか?

2024年8月7日 15:19

 日経平均株価は8月5日、前営業日比4,451円安の3万1458円と、大幅な下落となった。「1987年のブラックマンデーを超える」という忌まわしい歴史まで引っ張り出して、衝撃の大きさを殊更に強調するメディアもあった。

【こちらも】世界同時株安にバフェット氏の不穏な動き?

 マスコミの好物はドラマチックな悲劇だ。何か事件が起きると、耳目を集めようとして煽るようにオーバーな報道をする。手垢のついた以前からの手法であっても注目が集まり、商売につながるという姿勢を恥ずかしげもなく、晒す。

 もちろん、株価が大きく値下がりすると、投資していた人にとっては多額の損失につながる一大事だし、規模が大きくなれば国家経済の屋台骨を揺らす事態を招く可能性を秘めている。だから決して無関心でいることを求めるわけではないが、いたずらに危機感を煽る姿勢には疑問を感じる。

 株式投資をする人は、関連するもろもろのリスクを承知した上でやっている(筈だ)。暴落にリアルタイムに対策を講じるか、呆然と見守るという対処法に違いはあっても、「何事も起こりうる」というスタンスが基本にある。

 新NISAには初心者が多いというお節介で、「悲鳴をあげる新NISA初心者」という意味合いの記事もあるが、分かりやすいフレーズを選んで文章にしているだけに見える。

 証券の窓販によるトラブルを教訓にして、金融商品の販売窓口は過剰なくらい慎重だから、新NISAの利用者も「下落」による「損失」は「自己責任」だとウンザリするくらい聞かされて、署名までしている。「こんなことになるとは聞かされていない」という人が出て来た、という話は今のところ聞かない。

 ブラックマンデーが悪夢であったことは間違いないが、37年前の出来事だ。37年間に拡大した経済を考えれば、今まで「超えてこなかった」ことは僥倖だったと感じるべきだろう。

 2月に日経平均株価が34年振りの最高値をつけたと話題になったことを思い出せば、悪夢の方が3年遅れて来たと考えるくらいの懐の深さがあってもいい。

 前日まで日本経済の宿痾のように言われて来た「円安」があっという間に「円高」に転じたと思ったら、今度は円高懐疑派が台頭して来た。すでに輸出企業が設定した為替レートを想定して、「大変だ」と騒いでいる御仁がいる。

 「日本にとって理想的な円相場はない」と言ってもいい。高い時も安い時も有利なグループと不利なグループが入れ替わるだけだから、極端な上下がない限り冷静に見守る他はない。

 6日に日経平均株価は急反発して、前日比3217円(10%)高で取引を終えたが、今後の動きは流動的だから、今回の大きな波が収まるまでにはしばらく時間がかかると見ていた方がいいだろう。どんな時にも株式市場に横溢する「疑心暗鬼」という怪物は、ひとたび目を覚ますとしばらく眠らない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

関連記事

最新記事