新中計で「国内日用品の構造改革」を打ち出したアース製薬は、虫ケアに次ぐ収益柱を確立できるか
2024年7月2日 09:31
アース製薬(東証プライム)。殺虫剤(虫ケア商品)で首位。主力商品に「アースノーマット」がある。
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6月21日付の神戸新聞NESTで『社長が時代劇を見ていてひらめいた、アース製薬「アースノーマット」発売40年で国内シェア9割に、コロナ渦も影響』と題する記事に出会った。かつてアース製薬は蚊取り線香やマット式蚊取り器で他社の後塵を拝し、切歯扼腕を余儀なくされていた。
そんな折も折。当時の社長:大塚正富氏(故人)が時代劇を見ていてあることに気づいた。行燈(あんどん)である。息を吹きかけ消さない限り/油がある限り、灯りがともっている。マット式蚊取り器で苦戦する中、「マットを毎日取り換えるのが面倒」という声に接したことが頭の中に思い浮かんだ。
2つが結びついた。『殺虫剤成分を含んだ液体を棒状の芯で吸い上げ、加熱して気化させる』という発想だ。マットを取り換える手間も省ける。液体を吸うための芯の開発という難題も、「マット式を開発する時から、線香の素材にマットを使うアイディアがあった。実践した」キャリアを活かしなんとか乗り切った。
アースノーマットの発売は1984年6月。こうした歴史無くしては、アース製薬が虫ケア商品で首位という今日も無かった。
そんな歴史の上に立ったアース製薬はいま、またしても大きな岐路に立っている。今年2月14日に発表した至2026年12月期に向けた中計にもそれは明らかだ。大掛かりな構造改革の実行である。
「売上高1700億円(23年12月期1583億円)」「営業利益70億円」「海外部門売上高250億円(63億円)」「DEレシオ0.3~0.4(0.15)」を掲げている中計の主軸は「日用品カテゴリーの選択と集中/30%の削減」と、「海外売上高の拡充」。
前12月期決算でも明らかだが、前期は「国内日用品の粗利益率が7.4P減の31.3%まで低下。入浴剤や洗口液をはじめとする日用品は、介護用品や除菌用品などの多角化を進めてきた。が新型コロナウイルスでの巣ごもり需要からの反動減が顕著で、収益性が悪化した結果だ」。「入浴剤などグループ内で重複する分野の整理も不可欠」といった課題も浮上した。
24年は在庫削減などの構造改革費用:15億円(3年間で50~60億円)を計上する。前期の決算発表説明会で川端克宜社長は、「撤退するカテゴリーを決め、リソースの配分をきっちりする」とした。果たして、虫ケア商品に次ぐ収益の第2の柱を確立できるのだろうか。
本稿作成中の時価は4700円台半ば、予想税引き後配当利回り2%余水準。3月の年初来安値:4125円から同高値4830円(6月)まで反発後の揉み合い場面。株式市場は構造改革の行方に、断を下しかねている。
ただ気になるのは信用取引の現状。6月7日から14日までの1週間で買い残:1万1400株減に対し、売り残は6万4000株増。取り組みは0.67倍。「売り筋の買い戻しが・・・」とする声も聞かれる・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)