銀河中心に吸い寄せられるガス雲の大部分、実は銀河系外起源だった 名大の研究

2024年3月9日 07:21

 天の川銀河の中心には大質量ブラックホールが存在することは、もはや多くの人が知るところだ。この大質量ブラックホールの重力は銀河系外のはるか彼方の宇宙空間にも及んでいるが、最近の研究により、銀河系内のガス雲のうちで中速度雲の構成ガスの大部分が、銀河系外を起源とするものであることが明らかにされた。

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 銀河の中心へ重力によって吸い寄せられるガスのほとんどは、銀河の回転運動に沿った動きをする。例えば太陽が銀河中心を公転する速度は、時速85万kmで秒速換算では約236kmとなる。だがそれらとは異なる速度で移動するものもあり、秒速100km以上のものを高速度雲、秒速30から100km程度のものを中速度雲と呼ぶ。名古屋大学は4日、中速度雲の構成ガスの大部分は、銀河系外を起源とすることが判明したと発表した。

 これらのガスの素性を調べるために用いられたのが、ガスに含まれる重元素の比率だ。重元素は恒星内部の核融合や超新星爆発によってしか生成されないため、これが多ければそのガスの起源は銀河系内となる。一方で重元素がほとんど含まれていなければ、そのガスの起源は銀河系外の、恒星が存在していない宇宙空間からもたらされたものであると判別できる。

 名古屋大学では、銀河全天のガス雲における重元素分布地図の作成を世界で初めて実施。その結果、従来重元素量が太陽系周囲のガスと同程度と考えられてきた中速度雲について、重元素量が太陽周囲の3分の1以下である成分が多く含まれていることを明らかにした。

 今回の研究成果により、従来常識(中速度雲が銀河由来であるとする説)が覆され、銀河の進化プロセス研究分野で新たな理論構築のきっかけになることが期待される。地球上では史上最強クラスの台風でも最大瞬間風速50m程度だが、それでも時速換算では180kmに過ぎない。今回話題となった中速度雲の移動速度が秒速50kmと仮定すると、時速換算では18万kmととてつもなく速い。地球と銀河系のスケールの違いには改めて驚愕させられる。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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