倉庫・物流準大手:ヤマタネの創業者は株・コメの相場師など多面的な顔を持つ山崎種二氏

2024年2月21日 08:53

 倉庫・物流業界の準大手格:ヤマタネ(東証プライム)。社会経済の立ち直りに合わせ各社切り返し基調も、「あと1歩」が現状。ヤマタネにも同様の指摘が出来る。

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 2021年3月期から前23年3月期までを営業増益率で追うと、「0.5%、マイナス9.1%、19.5%」。そして今3月期も「4.7%増収(535億円)、12.5%営業減益(31億4000万円)、2.3%最終増益(22億円)」計画。

 開示済みの至第3四半期の累計実数は、「466億1400万円、26億9800万円、20億2000万円」。サプライズには欠ける状況。ただ株主に対する前向きな姿勢は、この間の「2円/3円/1円/1円増予定」が示す通り100周年(今期)企業の面目躍如といえる。もっとも100周年とは言うが、現業の形態に至ってからは60余年。

 ただ60年の間にヤマタネは「らしさ」をしっかりと身に着けてきた。例えば・・・

「共同配送」: 配送効率を高めるための、複数の荷主の同一カテゴリー製品の共同配送。

「文書集配」: 独自開発の文書管理システム“Box Manager”と配送システムとリンクし、顧客からの集荷・配送・廃棄の指示に対応。それぞれの工程で検品を行い、GPSと連携して集荷車両の位置も確認できる一元管理体制。

「産廃物収集運搬」: 産廃処理法に基づく許可を取得しており、産廃物・リサイクル品の収集運搬から最終処理までを担っている。

 ヤマタネの事業は前記の文書集配を軸にした「物流事業」、そして「何故」は後述するが「玄米販売を中心とした食品事業」であり「不動産事業」が柱。

 食品事業の源流?は、創業者:故山崎種二氏の生業に求められる。ヤマタネの本社は元々、兜町にあった。山崎氏は近代絵画の収集家としても知られ、横山大観の著作等を集め本社と隣接する地に「山種美術館」を設営していた。

 そんな1面を有する山崎氏は山崎証券(現在のSMBC日興証券を形成する元1社)を設立(1944年)。戦前戦後「売りの山種」と称される相場師だった。株相場に留まらず「米相場」でも存在感を示していた。

 兜町は変わった。旧東京証券取引所がシステム館に生まれ変わった後、象徴する建屋がなかった。2021年夏、兜町を象徴する建屋として生まれたのが、地下鉄東西線:茅場町駅に通じた『KABUTOONE(地上15階・地下2階/総床面積3万9208m2)』なる超高層オフィスビル。前記のような建屋が建つ土地の地主の1社がヤマタネ。

 前3月期のヤマタネの決算を覗くと不動産事業は、前期比11.2%増収(40億8100万円)/23.8%営業増益(20億3700万円)。ヤマタネでは「KABUTOONEの通期寄与の結果」と発信している。

 至25年3月期の中計で「売上高565億円、営業利益32億円」と、社会経済の回復歩調を反映している。

 本稿作成中の時価は2400円台前半。今年2月に2648円まで買い直された後の調整場面。予想税引き後配当利回り1.9%弱。PBR0.52倍を勘案すると押し目買いとなろうが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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