月の収縮がアルテミス計画に影響を及ぼす? 米メリーランド大の研究
2024年1月30日 09:08
地球から眺める月は、見かけ上は太陽と並ぶ巨大な存在だが、荒々しい太陽の輝きと比べて、静かで優しい光で、人々を魅了している。この一見静かな世界を想像させる月で、ダイナミックな地質活動が存在し、しかも45m以上も収縮を起こしていたことが、米国メリーランド大学の研究により明らかになった。
【こちらも】人類の月面再到達は2026年秋以降 NASAがアルテミス計画の最新予定を公表
月の収縮が確認されたのは、アルテミス計画で着陸が予定されていた地域に含まれており、場合によっては着陸地点の修正が必要になるかもしれないという。この収縮は、過去数億年にわたる月のコアの冷却に伴い生じた断層が原因であると考えられているが、この断層が起きる際に地震が起こり、それがアルテミス計画に悪い影響を及ぼすのだ。
メリーランド大学の研究者らは、アポロが50年以上前に月に設置した地震計による観測データを用いて、今回の収縮が起こった月の南極付近における、表面状態の安定性に関するシミュレーションを実施。一部の地域が、地震の揺れによる地滑りに対して特に脆弱であることを発見したという。
地球では大規模地震と言えどもその揺れが続く時間は、どんなに多く見積もったとしても数分未満だが、月ではマグニチュード5クラスの地震での揺れは、数時間に及ぶという。
能登半島地震が正月に起こったばかりだが、地球上でしかも先進国である日本においてであっても、復旧の見通しがなかなか立てられないほど、被害は深刻なものとなった。そのことを考えれば、月面のアルテミスIIIの着陸地点で、このような揺れが最大数時間も続けば、ただちに命の危険と隣り合わせになることは必至だ。
地球上では今回のニュースは日常生活には全く影響がないが、アルテミス計画においては非常に深刻なリスク情報であり、このようなリスクがない場所を大至急探し出していく必要性がありそうだ。
NASAの発表によれば、人類が再び月に降り立つアルテミスIIIが実現するのは2026年にずれ込む予定だが、月面基地建設も予定されており、着陸地点の見直しが間に合うのかどうか気になるところだ。
なお今回の研究詳細は、1月25日(現地時間)に米国天文学会誌「The Planetary Science Journal」で公開されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)