日本工営の持ち株会社化で生まれたID&E、持ち株会社化は当然の帰結と考える理由
2024年1月21日 17:32
ID&Eホールディングス(東証プライム。以下、ID&E)。2023年7月、創業77年を迎えた日本工営の持ち株会社として登場した。正直、長らく親しんだ日本工営の名前が上場企業でなくなることにはいささか寂しさを覚える。
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ホールディングス化(HD化)を打ち出したのは、21年に日本工営の社長に就任した新屋浩明氏だった。就任以降、新屋氏は機に触れ折に触れてHDの意図をこう語っている。
「我々は日本では更に国内シェアを高め圧倒的なNO1、世界でもトップクラス(世界シェア:現状約3割)の地位を盤石なものにして、内外に君臨するコンサルティング・エンジニアリング企業になることを掲げている。目標達成には大きな変革や挑戦が必要。HD体制への移行は長期経営戦略を着実に実現し、成長を確かなものとするための重要な一歩」。
ID&Eの総売上高に占める海外比率は43%。商圏は160以上の国・地域に及ぶ。手元の四季報特色欄の表現を借りれば、『英建設(設計)会社(BDP)傘下に入れ海外注力』とある。
ID&Eの設立には自体には、そもそも違和感はない。
日本工営の事業の源泉を紐解くと・・・初代社長:久保田豊氏は久保田工事事務所を設立し戦前、数々の電源開発に従事した。鴨緑江(北朝鮮)に建設した水豊発電所などが代表格とされ、水力発電所の設立に伴い河川・ダムの計画・設計と深く関わってきた・・・。戦後の朝鮮動乱期にはGHQの要請を受け朝鮮復興に携わったのを契機に、東南アジアのダム建設等に広く・深く関わってきた。海外で培った技術力・開発力を落とし込む形で日本工営は国内での足跡を残し、一流企業へとのし上がってきた。
その意味でHD化は、内外でより認知される存在としての「あって然るべき」施策と言える。
BDPを傘下に収め海外事業の拡充⇔事業ノウハウの積み重ねを計る。それを国内事業の拡充⇔ノウハウの更なる充実を図る。新屋体制下に移行後「日本工営都市空間」「日本工営ビジネスパートナーズ」「日本工営エナジーソリューションズ」が営業を開始している。
今2024年6月期は、HD化後に迎える初の中計の最終年。「受注高1500億円(21年6月期比12.5%増)」「売上収益115億円(31.5%増)」「営業利益115億円(61.3%増)」「最終利益71億円(56.7%増)」が掲げられている。
着地を最も興味深く待っているのは、株価であろう。ID&Eの初値は3680円。7月10日の3100円まで調整し、9月26日に3700円をつけ時価は3485円。予想税引き後配当利回り2.9%弱。今後PBR0.67倍が材料視される可能性も高くなると思えるが、さて・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)