破綻寸前の大戸屋を敢えて呑み込んだコロワイドは、ゼンショーHDとの距離を詰められるか

2024年1月4日 16:25

 大戸屋HD(東証スタンダード)がコロワイド(東証プライム)の傘下入りしたのは、2020年9月30日。7月10日に開始されたコロワイドによるTOBが成立した結果だった。成立した30日の大戸屋HDの株価は、3115円の当時の年初来高値をつけた(年初来安値は4月の1614円)。そして昨年末の引け値は5130円。

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 この限りでは、株価は評価している。さもありなん。20年9月末で債務超過に陥った大戸屋HDはコロワイドに対し第三者割当増資を実施、債務超過を解消した。生き残った。TOBを仕掛ける時点でコロワイドが大戸屋HDの債務超過に向かう流れを、承知していないはずはない。

 とすれば債務超過予備軍に敢えてTOBを仕掛けた理由は、何だったのか。ここからは、私の推論だが・・・

 個人投資家には便利な企業分析ツールに、バフェットコードがある。活用した。大戸屋HDもコロワイドも所属する、飲食業界の(売上高)ランキングを調べようと思ったからだ。結果は第1位がゼンショーHD(東証プライム。7799億6400万円)、そして第5位にコロワイド(2208億3000万円)がランキングされていた。

 周知の通りゼンショーHDは牛丼チェーン:すき家をはじめ、21ブランドの飲食店チェーンを展開している。株式市場の評価も高い。昨年末の引け値7389円に対し、IFIS目標平均株価は8450円。過去10年間の株価動向は、修正値ベースで6.5倍弱。

 対してコロワイドはコロワイドMD(各種食料品の商品開発)をはじめ、牛角に代表されるレインズ/ステーキ宮などの飲食店直営・FC事業の展開。そこに大戸屋が加わった。コロワイドに対する株式市場の姿勢も昨年末の引け値2222円は、10年タームでみると修正値ベースのパフォーマンスは約2.1倍という具合。

 ゼンショーHDの今日の立ち位置は、M&A戦略の駆使で築かれたと言って過言ではない。一方のコロワイドも大戸屋HDのTOBに象徴されるようにM&Aの活用を積極化している。

 つまりコロワイドにいま「目指すはゼンショーHD」、の意識があると考えるのも決して暴論ではあるまい。

 大戸屋HDに対し2024年第1号の四季報は、業績欄の見出しを【大幅増益】とふっている。23年3月期の決算説明資料を読み込むと、「コロワイド風」展開への旋回が随所に見て取れる。ちなみに22年4月から23年3月までの既存店売上高は前年同期比で9.8%~35.5%増と、1カ月たりとも落ち込むことなく推移している。コロワイドはM&A戦略による業容拡大に自信を得たのではないか・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る

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