リュウグウサンプルと太古に地球に落下した隕石に明白な相違点 東北大の研究
2023年12月16日 11:25
地球が誕生して間もない頃に落下した隕石と、小惑星リュウグウから「はやぶさ2」が持ち帰ったサンプルは、太陽系誕生直後の情報を保持しているという意味においては、共通の存在と認識されてきた。
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だが、リュウグウサンプルと隕石には明白な違いがあり、このような相違をもたらす原因を明確にすることで、隕石の分析による太陽系誕生初期の謎を解明する際の精度を高められる可能性があることが、東北大学の研究者らによって明らかにされた。
東北大学は7日、リュウグウサンプルと、地球に落下した隕石のうち炭素質コンドライトとの相違について、炭素質コンドライトを300度で加熱したところ、リュウグウサンプルのスペクトルを再現できたと発表した。両者は性質がよく似ているが、その反射率スペクトルには相違点があることが判明しており、炭素質コンドライトのほうが明るく、リュウグウサンプルのほうが暗くなっている。
隕石の脱水と隕石に含まれる化合物から鉄を還元する温度が300度であり、今回の研究では、この反応を炭素質コンドライトで生じさせ、リュウグウサンプルと同じ状況を作り出したのだ。つまり、炭素質コンドライトは地球の風化作用で、大気に含まれる水や酸素と反応したことで、宇宙にあった状態から反射スペクトルが大きく変化し明るくなったことを明らかにしたのだ。
この発見は、太古に地球に落下した隕石の風化作用による影響を取り除くための方法を明らかにし、その結果、隕石分析による太陽系誕生初期の状況を探る際の研究精度向上に繋がることを意味する。
実はこの種の研究において、研究者らはサンプルの履歴に想像を絶するほどの注意を払っている。リュウグウサンプルとて例外ではない。
リュウグウサンプルのスペクトルを分析する際にも、地球大気の影響を受けないよう細心の注意を払っている。ましてや地上で数十億年も大気にさらされた隕石を分析するとなれば、どのような注意を払うべきなのかは非常に難題である。本研究でそれに対する答えを導き出すことに成功した功績は計り知れない。
なお研究の成果は、12月7日に米国科学振興協会(AAAS)が発行する学術誌「Science Advances」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)