不動産業界で屈指の営業利益率:ヒューリックの注力分野「4K」とは
2023年11月12日 08:45
不動産業界の売上高上位3社は、三菱地所・三井不動産・住友不動産。長らく変化なし、今後もまず変わることはないと思える。
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対して興味深いのが、営業利益率。前期実績でみると、住友不動産・ヒューリック(東証プライム)・三菱地所の順。が今期予想ではヒューリック(30.4%)が住友不動産(26.2%)を抜き、1位に躍り出る。もっともヒューリックは前期の大型物件売却の反動で、今期の予想売上高10.2%減収。といった数字のトリック?が働いている面はあるが。
ただ、ヒューリックの営業利益率の高さは評価に値すると痛感する。前2022年12月期+今期予想(10月27日に上方修正)の平均値は、26.88%。「祖業が旧富士銀行の店舗管理。それが時間の経過の中で保有・管理業となり、都区内の主要駅の駅近にビル(総ビル数の7割が都区内)を保有している」と言う解説がなされる。否定はしない。
がそれだけでは、高営業利益率は説明しきれない。
みずほ銀行副頭取から2006年にヒューリック(旧日本橋興業)に転じた、現代表取締役会長の西浦三郎氏はヒューリック急成長の背景を「ひとさまと違うことをやる」と言及している。
「不動産業界の大手とは、そもそも資本力が違う。と同じことをやっていたのでは、勝ち目がない。だからマンションはやらないが、老人ホームはやる」といった具合。
また最近では「4K(高齢化と健康・観光・環境・子供教育)に注力しているし、拡充・展開を進めていく」としている。具体的には、こんな現実・計画を指している。
★高齢化と健康: 計32室の老人ホーム(チャームプレミアグラン南麻布)等を展開している(運営はチャーム・ケア・コーポレーション)。
★観光: 観光資源が集積する両国に、ザ・ゲートホテル両国by HULICを展開等。
★環境: 2050年のカーボンニュートラル実現の一端を担う観点から、1000億円を投じて「太陽光発電」「小水力発電ダム」の建設(開始)。
★子供教育: リソー教育やコナミスポーツなどと提携し、複数の子供向け施設を収容する「こどもでぱーと」の建設。既に2025年から27年にかけて竣工予定の6施設のプロジェクトが進んでいる。
至2029年の長期計画でヒューリックは「経常利益1800億円(20年920億円)」「100物件超の開発・建て替え」を掲げる一方で、「高齢者施設5000室(本稿作成時点3400室)」「観光施設1万室(8200室)」「環境事業は(25年までに)、再生可能エネルギーの自社比率化100%を実現」「こどもでぱーとは約20棟建設」を目標値として公にしている。
ヒューリックの本稿作成時の株価は1400円台入り口、予想税引き後配当利回り2.7%水準。対してIFIS目標平均株価1349円。算出者7人中2人が強気も、5人は中立姿勢。配当を享受しつつ、押し目買い姿勢で構えるのが賢明か。(記事:千葉明・記事一覧を見る)