地球マントルの不均一、原因は月誕生時の原始惑星衝突だった? 米英中の研究

2023年11月5日 07:43

 地球内部は大雑把に表現すれば、最も表層の地殻(厚さ5~60km)、その下層にあるマントル(地殻の内側かつ地表から約2900kmまでの層)、それより深部の核(マントルの内側から地球中心までの層)で構成される。

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 また地震波はマントルを伝播するが、マントルは均一ではなく、他の部分よりも地震波の伝播速度が遅い2カ所の大陸サイズの領域が存在していることが知られている。これを専門家はLLVPと表現している。中国科学院上海天文台ら米英中の国際研究チームは、11月2日付けの雑誌「nature」で、このLLVPの生成原因が、月誕生時の原始惑星衝突であった可能性を示唆する論文を公開した。

 月は今からおよそ46億年前、地球にテイアと呼ばれる仮想上の原始惑星が衝突したことで誕生したと考えられている。国際研究チームはコンピューターによるテイア衝突シミュレーションを実施し、テイアのマントルの一部が原始地球の固体下部マントルに到達した可能性があることを突き止めた。

 月はFeO含有量が高いため、テイアのマントルは本質的に原始地球のマントルよりも2.0~3.5%程度密度が高いと考えられる。先のテイア衝突シミュレーションによれば、テイア衝突後に高密度の厚さ数十kmにも及ぶテイアマントルが、地球マントル最下部にまで沈み込み、そこで堆積していったものが、現在まで生き残っているとしている。

 地震波の伝播速度はマントルの密度に依存し、密度が小さいほど速く伝わる原則があることわかっており、今回の国際研究チームによるテイア衝突シミュレーション結果は、この原則に合致する。

 46億年前の大事件は原始惑星テイアに2つの全く異なる運命をもたらした。地球から離れ、宇宙空間に飛び散ったテイアの残骸はやがて月になったが、その火山活動は既に約20億年前に終結しており、死んだ星になった。そして、地球内部に潜入したテイアの残骸は46億年後の今も地球内部で生き続け、地球の地震波の伝播に大きな影響を与え続けている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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