企業とフリーランサーのマッチングサイトを運営する:ランサーズの起業契機と現状

2023年9月19日 16:15

 ランサーズ(東証グロース)。設立は2008年。企業(発注者)と個人(求職者)をマッチングするプラットフォーム(Lancers)を運営している。

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 最近では9月14日の企業・産業欄『値もいいが味もよし、淡路産にこだわった「ごちそう缶詰」を非常食として如何か』と題する記事を投稿しているが、情報の発信元は知人のフリーランスで複数企業の広報・PRを担当していた女性からのリリース。

 実は彼女とはランサーズの広報担当者時代に知り合った。創業者社長の取材の折りだった。がランサーズに関する記事の投稿は、見送ってきた。「継続企業の前提に重要事象」が付記された企業だったからである。

 しかし書こうと意を決したのは、秋号の四季報が【黒字化】の見出しで今3月期の会社側の「黒字転換計画」に対し来期についても「独自黒字幅拡大」としたからである。

 ランサーズは創業者社長:秋好陽介氏の原体験が、設立の背景・契機となった。秋好氏は学卒後ニフティに入社。ネットサービスの企画・開発を手掛けた。そこで「企業の発注先は個人ではなく、法人に限定されることを知った」ことが、ランサーズ設立に秋好氏の背中を強く押した。

 ランサーズを「個のエンパワーメント」をミッションに立ち上げた。当時、国内には同業者はいなかった。海外にはあったが、あまり話題にはなっていなかった。表現は悪いが、要は自らの体験上の直感的な確信?だけが、新たな市場に踏み出させたと言える。

 ではランサーズの存在は、どうして世の中に認識されていったのか。無論、求人企業や職を求めるフリーランサーの開拓努力は言うまでもない。

 が秋好氏は、「東日本大震災(11年3月)が、当社というよりフリーランスという在り方を考える時に印象的だった」とする。そして、こう続けた。「未曾有の災害の中で、自分自身の働き方を見直す人が増えた。結果として、ランサーズの認識度も上がった」。

 広報担当者:件の女性も、「東日本大震災を機にランサーズの機能の大幅な改善などを実施した。その効果でランサーズの存在は知られ始めた」とした。ちなみに爾来10年、ランサーズへの求職登録者は130万人を超えている。

 収益体系は、求人企業がフリーランスに支払う契約金の、5~20%を手数料として得る。「エンジニアやデザイナーなど、専門的なビジネススキルが必要な業種に強みがあると認識している」と訴求している。

 いま「働き方改革の時代」が指摘され、標榜されている。その範疇には「副業」「フリーランス」の在り様も含まれる。それを変えた大きな要因は、IT。マッチングサイトは、その象徴例と言える。

 老いたとはいえ私は年金を受給しながらも、一方でフリーランスの物書きの一員。が時として思う。「果たして、とりわけ若手フリーランサーは足元・先々の生計なり資産形成に繋げられるのか」と。そんな問いかけに秋好氏を遮るように、件の女性は「当社のプラットフォームで、通常のビジネスマン以上の年収を得ている方も少なくありません」とした。

 受けて?秋好氏も「エンジニアやデザイナー、マーケッターなどスキルの高い人が登録者には多い。求人側が求める案件も、高付加価値で高単価なものが多い」と強調し、こう続けた。「良質なフリーランサーとクライアントをマッチングさせるためのアルゴリズムや、フリーランサーの定着を促すためのスキル取得の施策を執っている」。

 ちなみに件の女性がフリーランスに転じたのは、「信じるフリーランス時代を、自分も実践するべきだと考えて・・・」とした。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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