アパレル:クロスプラスの収益急回復と業界動向予想を読み比べる
2023年9月9日 07:47
アパレル業界の今後はどうなるのか。矢野経済研究所の調べでは2020年にコロナパンデミックの状況下で前年比81.9%(7兆5158億円)に落ち込んだ市場規模は、21年には前年比101.3%(7兆6105億円)に微回復した。が矢野経済では今後について厳しい見方を崩していない。
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「アパレル各社は単価が高く、意識の高まりからサステナブル商品との取り組みに注力している。が、市場全体の販売数量の減少を補う程度にとどまる。背景にあるのは国内人口の減少だ。アパレル市場の継続的な成長を期待するのは難しい」と発信している。
具体的な上場企業の収益動向はどうか。四季報のパラパラ捲りをした。【増配】という業績欄の見出しが記された企業に出会った。
クロスプラス(東証スタンダード・名証メイン)。ガールズ服(おしゃれな子供服)が特色な婦人服の製造卸を展開。量販店向けで首位だという。
まず、収益の推移を追った。2022年1月期「7.6%減収、営業損失、赤字、24円配」/23年1月期「3.5%減収、営業利益1億8300万円、純益4億5500万円、12円減配12円配」。
それが今1月期は「1.7%増収、63.5%営業増益、9.8%最終増益、2円増配14円配」と激変?・・・かつ6月9日開示の第1四半期は前年同期比「4.7%増収、95.7%営業増益、149.3%最終増益」と想定を上回る出足。そして7月19日には中間期・通期の予想を上方修正、増配を発表した。
新たな通期計画は「3.4%増収(590億円)、14.46%倍営業増益(120億円)、2.86倍(13億円)」。配当は「2円増配14円配を12円増配24円配」へ。
クロスプラスが公に発信した「修正理由」でなく、第1四半期の「激変」の何故をフォローしてみた。
★売り上げ増: コロナ5類移行効果。商業施設の稼働復調。アパレル卸・ECを含む小売りの好調。旅行など外出機会の増加やオケージョン(結婚式等の祝い服)需要回復に伴う伸長。全ての販売チャネルで増収。
★増益: 仕入れ原価上昇への値上げ効果の発現。単品の付加価値を高めたNB商品強化。アセアンの生産比率を高め仕入れ原価の低減。結果、売上総利益は前年同期比14.0%増。
コロナ環境の和らぎ+進めてきた経費節減効果というわけだ。
株価も上方修正を素直に好感している。7月20日・21日は出来高急増下でそれぞれ150円高。本稿作成中の時価は1140円水準、予想税引き後配当利回り1.7%弱。8月7日に1200円まで買われ微調整段階。
がクロスプラスから伝わってくる範囲内では、冒頭に記した矢野経済研究所の見方への見解は確認できない。8月31日に「どう捉えるか」と質問を送付したが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)