発行済株式の4分の1超を自社株買い 東証が拍手喝采した:シチズンとはこんな会社
2023年7月22日 15:37
今回の東証の「PBR1倍割れ是正⇔株価底上げ」の姿勢、「改善策提示」の動きは極めてシビアだった。忘れられないのが、東証の意向が伝わった直後のシチズン時計(東証プライム。以下、シチズン)の動きに象徴的。
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意向が伝わった早々の2月13日「東証の方針も考慮し、株主還元策の充実と資本効率の向上を図る」とし、発行済株式の25.6%に当たる7500万株の自社株買いを発表した。4分の1強の自社株買い。ついぞ耳にしたことがなかった。発表前に0.7倍だったPBRは早々に1倍に達した。
シチズンは1918年(大正7年)に、故山崎亀吉氏により創業された。その存在が知られる契機は1924年の懐中時計の発売。シチズンブランドの発端となった。この懐中時計は故木下道雄侍従により、昭和天皇に献上されたとも伝えている。
そんなシチズンの収益動向は、しっかりの展開を見せている。前23年3月期は「7.1%増収、6.4%営業増益、6.4%経常増益、16円増配34円配」。対して今期は「2.9%増収(3100億円)、5.4%営業増益(250億円)、10.6%経常減益(260億円)、6円増配40円配」計画。今期の経常減益予想は「前期の1米ドル:135円想定」から「130円への円高想定」に変更した結果と捉えられる。前期決算は、こんな具合。
(時計事業): プレミアムブランド/エコ・ドライブGPS衛星電波時計/ブランド誕生35周年記念限定モデルなどの高級品が、国内市場で堅調。海外市場も「クルーズ船向け販売の好調」に示されるようにトラベル需要回復も加わり順調。
(工作機械&デバイス事業&情報機器事業): 注力中の3分野は、周知の通り自動車メーカー各社の部品不足・半導体不足にくじかれる形となった。「今期は回復基調入り」が見込まれている。
それにしてもシチズンの大量自社株買い宣言のインパクトは、「凄まじい」ものだった。2月14日の終り値:718円に対し15日には817円まで13.78%、まで文字通り急伸。出来高も20.6倍増加した。
その後は適当な押し目を入れ、再度じり高基調入り。本稿作成時の時価は800円台半ば。予想税引き後配当利回り3.7%。IFIS目標平均株価は825円も算出者6人中4人が「中立」、2人が「弱気」姿勢。過去9年半余の修正値ベースの株価パフォーマンスは横這い状態。押し目買い姿勢で好配当を享受する姿勢が賢明だろうが、改めて株価の「サプライズ大好き」を知らされた。(記事:千葉明・記事一覧を見る)