132億年前の散光星雲や暗黒星雲を捉えることに成功 名大らの研究

2023年7月19日 17:20

 名古屋大学は14日、これまでで最古となる、宇宙誕生からわずか6億年後(つまり今から132億年前)の暗黒星雲ならびに散光星雲の姿を捉えることに成功したと、発表した。

【こちらも】宇宙誕生初期の宇宙再電離を初めて直接観測 名大らの研究

 暗黒星雲も散光星雲も銀河と比較してスケールがけた違いに小さいため、従来報じられてきた超遠方銀河発見のニュースと比べて、格段に価値が高いものだ。このはるか昔の小さな小さな天体が捉えられたのは、132億光年の彼方にある銀河MACS0416_Y1においてのことだ。

 この非常に困難な観測は、名古屋大学、筑波大学らの科学者らを中心とする国際研究チームがアルマ望遠鏡を用いて成し遂げた。

 アルマ望遠鏡は、南米の標高約5000mにあるアカタマ砂漠に、口径12mのパラボラアンテナ54基と7mのパラボラアンテナ12基を設置。世界各国によって共同運用されている、世界一の分解能(単体に換算すると口径18kmの電波望遠鏡に匹敵する)を持つ巨大電波望遠鏡システムだ。

 アルマ望遠鏡が捉えた電波画像からは、暗黒星雲と散光星雲が互いに入り混じり、星の誕生や超新星爆発によって作られた巨大な空洞構造”スーパーバブル”の存在が確認されたという。

 暗黒星雲を構成する塵は、星が死を迎えた際に起こる超新星爆発によって宇宙空間にばらまかれたもので、光を通さないために地球からの観測では暗い雲のような形で捉えられる。この暗黒星雲内にある塵はやがて集積され、星の誕生にもつながっていく。星が誕生すると周りの星間ガスから電子をはぎ取り、イオン化される。それが誕生した星の光で照らされて輝いている姿が、散光星雲だ。

 宇宙が誕生してわずか6億年後に星の死骸でできた暗黒星雲が既に存在していた事実に、科学者らも驚きを隠せないという。もっとも一般的な太陽クラスのサイズの恒星であれば、その寿命は100億年程度だが、今回観測された暗黒星雲のもととなった恒星は、それよりもはるかに寿命が短い(つまり質量が大きい)と考えられる。

 なお今回の研究成果は、7月13日に米国学術雑誌『The Astrophysical Journal(アストロフィジカル・ジャーナル)』に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連記事

最新記事