アダストリアが新値追い、中計も強気 が、上がり続けるだけの株はない
2023年6月11日 07:05
6月5日(月)。前週末の2日に発表された5月の既存店売上高(前年同期比11.2%増)を受け、アダストリア(東証プライム市場)の株価が年初来高値を更新した。
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アダストリアは、グローバルワーク・ニコアンド・ローズファームなど300余ブランドの服飾品を内外約1400店、及び自社ECで販売している小売業。周知の通り既存店売上高の推移は、小売業の好不調を見極める上でかっこうの指標となる。その意味で件の株価動向は頷ける。ちなみに今2月期入り後の3-5月ベースで、平均12.3%増。
私がそもそも昨今の同社に興味を覚えたのは、コロナ禍で2021年2月期に「17.3%減収、94.0%営業減益、6億9300万円最終赤字」に落ち込んだ後の凄まじい回復力。22年2月期「9.6%増収、756.1%営業増益、49億1700万円の黒字転換」。前23年2月期も「20.3%増収、75.4%営業増益、53.3%最終増益」。
そして実は前期は期中に上方修正しながら、着地はその値に達しなかった事実。その理由が、不正アクセスによるシステムの停止。アダストリアは前期決算資料で「社内の業務システム、物流システム、ECシステムの停止に伴う未達」と、「悔しさ」が滲み出た表現で振り返っている。
物流システム停止による店舗在庫不足/EC休止に伴い売上高約20億円、荒利約10億円の逸失。対応経費としてサイト再開後のクーポン/在庫評価で約4億円の結果、営業利益で約14億円の逸失。不正アクセスが企業の(収益)動向にも影響をもたらす点に、時代の怖さを覚えたからである。
が、株価動向が示したように前期の決算発表説明会で示された通り、アダストリアは頑として強気姿勢を崩していない。
至26年2月期の中計で「売上高2800億円(23年3月期比15.4%増)、営業利益率8%(同期4.74%)」を掲げ、木村喜輝社長は「マルチブランド、マルチカテゴリーの拡張。デジタル(自社EC)の顧客接点・サービスの拡大。グローカル(中国でのモデル展開、東南アジア開拓)。新規事業(飲食事業確立)を軸に」と強気姿勢を示している。
本稿作成時の株価動向は、年初来高値更新中。それでも予想税引き後配当利回りは1.8%余り。IFIS目標平均株価3020円(電話口の向こうで欧州系大手証券のストラテジストは、うちの目標値は3300円とした)。だが上がり続けるだけの株はない。アダストリアの中計を買うなら「好配当利回りを肴に、難平買い下がりぐらいのつもりで」、と株価は言っているような気もするが・・・(記事:千葉明・記事一覧を見る)