携帯通信網が地球外知的生命体に監視される可能性 モーリシャス大らの研究
2023年5月4日 06:58
携帯通信網からの電波は、宇宙空間にも伝わる。携帯通信網から宇宙に意図せず発せられる電波は、軍事目的電波に次いで多い。地球で携帯通信網が整備されて数十年が経過し、さらには今後5G通信網が普及すれば、宇宙に伝わる電波強度はさらに増大する。もし数十光年以内に地球外知的生命体がいたら、これらの電波は間違いなく傍受されるだろう。
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この現状を踏まえ、モーリシャス大学の科学者らによる国際研究チームは、もし地球外生命体が存在したら、携帯通信網からの電波で地球をどのように監視できるかという研究命題に取り組み、その結果を発表した。研究の詳細は、「英国王立天文学会」に掲載されている。
彼らは10光年以内にある3つの惑星系(αケンタウリ: 4.2光年、バーナード星: 6光年、HD95735: 8.3光年)を想定し、地球からの携帯電波が受信される可能性について検討を試みている。
携帯通信インフラは人口集中部ではアンテナ網が非常に密で、逆に過疎地域では疎である。また地球の自転により、地球外知的生命体が傍受できるアンテナ網が発する電波強度は変化する。
もしこの電波受信が可能であれば、地球の自転周期や経度ごとの人口分布などの情報を推定可能だ。だが個別の周波数の異なる電波を逐一傍受して、会話の内容を確認し、文明のレベルを推定できるほどの電波強度はないかもしれない。
研究結果によると、αケンタウリには、西アジアや中央ヨーロッパから最大で3.5GWに相当する強度の信号が、バーナード星には地球各地から最大で3GW台前半の信号が、HD95735には中国東岸から最大で4GWの信号が伝播している。だが常時この強度の信号が伝わるわけではなく、電波の方向依存性が高いため、これら3つの惑星系では地球の携帯通信網の電波は受信できないと結論付けている。
SF小説「コンタクト」では、地球から25光年離れたベガ星系の知的生命体が、50年前のナチス台頭を報じたテレビニュース電波を傍受し、地球人にメッセージを送信してきた。このような事件に遭遇する可能性は、地球文明からの電波が届く範囲が年々拡大し、今後より高まっていくだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る)