りょうけん座変光星で秒速1600kmの超高速プロミネンス噴出 史上最大質量 京大らが観測
2023年5月3日 15:56
太陽以外の恒星はどんなに高性能の巨大望遠鏡を駆使しても、その距離の遠さから点としてしか捉えることができない。恒星よりも小さい太陽系外惑星は点にすら見えないが、それらの大きさや、岩石惑星かガス惑星か、大気組成はどうなのか、生命誕生の可能性の有無など、驚くほど詳細なデータが得られている。
【こちらも】恒星誕生プロセスをダイナミックに捉えることに成功 九大らの研究
いっぽうで恒星では、超新星爆発や中性子星、ブラックホールなど星の終末期以降のニュースは豊富だが、活動期の恒星のダイナミックな活動に関する研究報告はさほど多くない。
京都大学は4月28日、同大学の3.8m「せいめい」望遠鏡を用いたりょうけん座RS型変光星V1355 Orionisのモニタ観測により、巨大爆発現象「スーパーフレア」とそれに伴う超高速プロミネンス噴出を検出することに成功したと発表した。
点にしか見えないこの星で、トランジット系外惑星探索衛星(TESS衛星)とせいめい望遠鏡がそれぞれ、白色光とHα水素線が増大しているのを検出したのは、2020年12月19 日23時30分(日本時間)のことだった。
その後これが、この星におけるスーパーフレアが原因であることを突き止め、最大級の太陽フレアの7千倍というエネルギー規模であったことも判明。それに伴うプロミネンス噴出速度は秒速1600kmにも及び、この星の重力を振り切るのに必要な速度である秒速350kmをはるかに超えていた。さらにその際に噴出された質量は、太陽で噴出される最大規模の質量の100倍程度であり、観測史上最大の重さを持つプロミネンスであったことも明らかにされた。
この現象は周辺惑星の大気を吹き飛ばし、生命の住めない環境にしてしまう懸念や、恒星の質量喪失と角運動量変化をもたらし、恒星進化への影響もある。恒星プロミネンスは、恒星系における生命誕生の可能性のカギも握るのだ。
今回は星のHα線のドップラーシフトを捉えたことが現象解明につながったが、X線減光を捉えることでも現象解明は可能だ。今後はHα線とX線の両面観測で、より詳細な現象解明につなげていきたいとしている。
なお本研究成果は、国際学術誌「The Astrophysical Journal」にオンライン掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)