障がい者雇用牽引のエスプールにも、債務超過の過去 どう乗り切ったのか!?

2023年4月11日 08:30

 エスプール(東証プライム)。障がい者雇用を支援する農園(わーくはぴねす農園)事業で、知名度を一気に高めた。好調な収益の推移を見せている。

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 前2022年11月期まで10期間の増収、7期間の連続増配。そして今期も、「6.1%の増収(282億8800万円)、17.1%の営業増益(36億2000万円)、34.2%の最終増益(24億2700万円)、2円増配10円配」計画で立ち上がった。

 わーくはぴねす農園は農園を複数の企業に賃貸し、企業に雇用された障がい者が働く共同農園。2022年版の内閣府の障害者白書には「18歳から65歳の障がい者の就職率は16%」と記されている。厚労省は企業の障がい者雇用率を現行の2.3%から24年4月に2.5%、26年7月に2.7%に引き上げる指針を公にしている。

 そうした国策を牽引する形で、エスプールの農園は今年2月末時点で全国38施設にまで拡大。農園を利用する大手を中心とする企業は523社、障がい者約3100名の就労が実現している。進出から今日までの、過去12年間の障がい者の定着率は92%を超えている。

 好収益継続の源泉となろう。

 エスプールは現社長の浦上壮平氏により、1999年に設立された。バブル崩壊後の景気低迷下で「大卒フリーター」が社会問題になっていた時期。家庭教師センターの役員を務めていた浦上氏は、就職難に悩む大卒フリーターを目の当たりにし「課題解決を目指し」起業した。今流に言えば「インターンシップ事業」が入り口だった。2年目で黒字化。VCからの資金調達もあり、順風満帆な立ち上がりだった。

 が、景気は2000年代初頭のITバブルで急回復。大学生の就職状況が大幅に改善した。大卒フリーターの就職支援事業は、岐路に立たされた。

 「早期の上場(2007年実現)」を視野に入れていたエスプールは、事業転換を決断。急拡大していた短期の人材派遣サービスに参入した。事業転換は成功した。ITエンジニアの派遣会社を買収した。

 そんな矢先、リーマンショックに見舞われた。買収した企業は売上高が3分の1まで激減。主力だった短期派遣サービスも売上急減。2010年、債務超過に転落した。400名いた社員数も150名まで減った。

 だが浦上氏は、へこたれなかった。「起業の原点:社会の役に立つ事業をもう一度創り上げていこう」「事業ポートフォリオ経営へ転換を図る」と、方向の舵を切った。具体的にみると、こんな具合だ。

 人材派遣事業の中心に、コールセンターがある。現時点の就業実績は、約5000名。人材の定着化や品質の・サービスの向上、生産性の向上策とし「グループ型派遣サービス」を導入している。スタッフと一緒に教育・育成を担うリーダー・監督者を派遣している。2015年に参入した農園事業も、グループ型派遣サービス制が執られている。

 企業に歴史あり。債務超過をも潜り抜けたエスプールの株価は調整済みベースで、過去9年余に15倍のパフォーマンスを残している。「障がい者雇用拡充」の流れを読み込むと、時価600円水準に対しIFIS目標平均株価が1350円も頷ける。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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