10期超の連続増配を視野に入れた、老舗不動産:東京建物の強い足元
2023年4月5日 08:42
東京建物(東証プライム)。1896年(明治29年)に旧安田財閥の創始者:安田善次郎氏により興された、日本で最も古い歴史を持つ不動産会社。
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斯界の先駆者として「住宅ローンの原型:割賦販売方式を創設」「1903年(明治36年)にいち早く海外に進出(中国・天津でビルや住宅の運営管理事業を展開)」「明治30年代に不動産鑑定業を開始(昭和38年:1963年、不動産鑑定評価制度を創設)」といった具合に、先行する足跡を残している。
現在は賃貸ビルとマンションを主軸に、オフィスや物流など収益不動産の開発に注力している。
総合不動産業にあって東京建物に「へえ~」と感心した入り口は、配当政策だった。前2022年12月期まで9期連続の増配を続け(その間に配当額は6.5倍に拡幅)、今期も7円増配の72円配計画。本稿作成中の時価:1570円水準の予想税引き後配当利回りは、3.7%。その限りでも投資妙味を覚える。
前12月期の「2.8%の営業収益(売上高)増、9.7%の営業増益、23.2%の最終増益」に対し今期は、「18.0%増収(4130億円)、2.4%営業増益(660億円)、3.3%最終増益(445億円)」計画。計画の内容をみると「ビル賃貸は再開発に伴いテナント撤退⇒空室増⇒賃料減」も、一方で「ビルや物流施設の投資家向け物件売却増」で増収増益と好循環。
更に興味を感じさせられるのは、至24年12月期の進行中の中計。「連結事業利益(営業利益+持ち分法投資損益)750億円」「ROE8~10%」「D/Eレシオ(負債資本比率、有利子負債÷自己資本、150~250%以上が健全財務の目安)2.4倍程度」などが掲げられている。
収益拡大に向けては<「総投資額:1兆4000億円」-「投資家向け売却物件投資:5500億円」「分譲マンションプロジェクト投資:4300億円」「大規模再開発投資:2300億円」等>を表明。「一層の体質強化・収益力強化を図り、新たなステージに立つ」という宣言だ。中計が計画通りに進めば連続増配期間が更に積み重ねられることは、間違いあるまい。
そんな東京建物を株式投資の対象とする場合、どんな姿勢が賢明か。この間の株価動向は昨年来高値2190円(昨年8月)から同安値1484円(今年1月)まで調整し、前記水準への小戻し基調。まずはIFIS目標平均株価2051円が目途となろう。
また1つの目途として中期スタンスとなろうが、PBR1倍(現在、0.74倍)回復を視野に入れる流れも視野に置きたい。前期末の純資産の合計金額は20年度末に比べ、291億7700万円増の4568億3800万円。純益剰余金の増加と、土地再評価差額金増の結果だ。
130年近い老舗大手不動産の勢いに衰えは、全く感じられない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)