リュウグウの粒子からRNAを構成する塩基のウラシルを発見 北大ら
2023年3月22日 17:50
北海道大学や海洋研究開発機構などの国際研究チームは22日、ハヤブサ2が小惑星リュウグウから回収したサンプルを分析した結果、ウラシルを発見したと発表した。宇宙生命の起源の解明に繋がるかもしれない、非常に重要な発見だ。
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ウラシルと言えば、RNAを構成する4種の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル)のうちの1つとなる。RNAはリボ核酸とも呼ばれ、DNA(デオキシリボ核酸)だけでは行うことができないたんぱく質の合成を助ける役割を持つ、生命活動には必要不可欠な物質だ。
また2度のタッチダウンにより、リュウグウの異なる位置から採取されたサンプルは、ウラシルの濃度に違いがみられたという。この違いは、紫外線光子や宇宙線などのエネルギー粒子によって引き起こされる、変化の程度の違いに関連している可能性があるという。
リュウグウの複数のサンプルでウラシルが見つかったことは、小惑星リュウグウにおいてはウラシルがありふれた存在であることを示唆する。
つまり、地球での生命誕生に繋がったもとになる物質のうちの1つであるウラシルは、少なくともリュウグウのような小惑星で生成され、何らかの原因によって地球にもたらされたのだろうという推測が成り立つのだ。
ただし、DNAもRNAもそれらを構成する塩基は比較的単純な構造を持っているため、リュウグウで自然発生したと考えても、大きな問題にはならない。だがこれらの塩基から構成される肝心のDNAやRNAは、非常に複雑な分子構造を持っており、今回のウラシルの発見が直ちに生命の根源を解明したことにはならない。
人類が生命誕生の謎を解明できる日が来るのはまだまだ遠い道のりになりそうだが、科学者たちの奮闘に期待していくほかないだろう。
なお今回の研究の成果は、3月22日公開の「Nature Communications誌」にオンライン掲載された。(記事:cedar3・記事一覧を見る)