火星で水分を豊富に含んだオパール層発見 アリゾナ州立大の研究
2023年1月5日 16:40
NASAは2030年代に人間を火星に送り込む目標を持っているが、具体的な道のりは、まだ不明点が多い。その理由は、火星旅行には往復で2~3年の期間を要し、その間に生じるであろう様々なリスクに対する解決策がまだ定まっていない点にある。そのリスクの中には、宇宙線被ばくや精神の不調、食料・水の供給問題などがある。
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アリゾナ州立大学の研究者らは2022年12月19日、火星現地で水の供給源が得られるかもしれないという研究成果を発表した。研究は、NASAの火星探査機キュリオシティローバーが、2012年に火星のゲールクレーターに到達し、様々な観測を行ったデータを解析した結果によるものだ。ゲールクレーターの堆積層には、光を発する層状のネットワークが存在し、この光は水分を多量に含むシリコン化合物であるオパールによるものであることが判明したという。
研究者らは、この光る堆積層は、かつて火星の地下において水が豊富な水脈ネットワークが存在した結果と推論している。それらが、その後に火星で起こった寒冷化や乾燥化のプロセスの中で、オパールの濃縮現象が起こり、もたらされたのではないかという。つまり、光る堆積層は火星が温暖で水も豊富だった時代の水脈ネットワークの名残であると結論付けているのだ。
火星の光る堆積層はかなり広範囲にわたり広がっており、オパール埋蔵量はかなりのものだ。ウィキペディアによればオパールは「化学組成は SiO2・nH2Oで、成分中に10%ぐらいまでの水分を含む」とされ、火星での水供給源として大いに期待ができよう。
地球から水を運ぶのと比べれば、火星で水を直接調達したほうが明らかにコストは安い。火星での長期滞在可能性も水の現地調達化で飛躍的に高まるだろう。オパールといえば宝石としての価値のほうが気になるのが人情だが、火星で人類が生き延びていくためには非常に重要な水供給源としてとらえるべきなのだ。
今回の研究の詳細は、アメリカ地球物理学連合が発行する科学誌「Journal of Geophysical Research」に12月19日付けで掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)