日医工ADR再生成立「会見」に覚えた、幾つかの「?」
2023年1月4日 11:35
年も押し迫った昨年12月28日、日医工は「第3回債権者会議を開き、債権者の銀行団に示している事業再生計画案が了承され、ADRが成立した」と発表した。
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この限りでは、15の金融機関が日医工に対し行ってきた融資額最大985億円が債権放棄され、日医工は破産を免れ事業再建を目指すことになったわけだが・・・
私は、この記者発表の現場に立ち会ってはいない。従い複数の新聞記者など参加者が報じたものに基づいて本稿を記している。
そして正直なところ、日医工・銀行団に対し禁じ得ない「?」を覚えている。債権者(融資団)との間でADRが成立する場合には、過去の例で見る限り「確たる事業再生計画案の提示が必須条件」となっているからだ。
しかし28日の段階で日医工が公表したそれは、「主力:富山工場の生産改善、不採算品の撤退」「コスト削減による収益構造の改革」「遊休資産等の売却による財務基盤の強化」と抽象的な内容にとどまっている。
例えば手元の日刊薬業の記者氏も「?」を抱いたのだろう。問うている。対して日医工は<債権者には説明しているが、計画の段階で確定していないものも多いと述べ、部分的な公表に理解を求めた>と記している。
仮に記者会見の場に居合わせることが出来たら、質問したいことは多々あった。
例えば2年連続で営業損失の米国子会社:米セージェントについて「事業は続ける」としたが、損失を一気に黒字化しうる方策は現にあるのか。残された選択肢として「売却」があろうが・・・「現時点で決まったものはない」というのは、セージェントへの対応策は全く進んでいないということになる。銀行団は納得したのか。
地元紙:富山新聞デジタル版11月24日付けでこう記している。
「日医工が人員削減や給与の減額を計画していることが23日、関係者への取材で分かった。・・・売却の可能性がある北海道(北広島市)など6工場の売却で従業員を削減する可能性があり、今後、削減規模や売却対象を詰めるとみられる」
だが28日の発表会では日医工は国内の人員削減は「全く考えていない。債権者の理解を得ている」と断言している。富山新聞の「誤報」ということか。だとすれば富山新聞は、それなりの続報を発するべきであろう。
ADR成立なら日医工は3~4月に2大株主が共同出資する合同会社が行う第三者割当増資で、完全子会社化し非上場企業となる。田村友一社長は退任する。通常ADR再生決定で日医工を引っ張ってきた役員連は、言葉を選ばずに言えば「戦犯」として伴って職を辞す。田村氏の後継者は決まっていない。ADR再生の真の大詰めは、ここからである。(記事:千葉明・記事一覧を見る)