人員削減発表のワコールの株価が、年初例高値ゾーンで推移している理由

2022年11月23日 17:27

 連日、ワコールホールディングス(東証プライム。以下ワコール)に関する記事に接した。11月10日にはヤフーニュースが配信した『ワコール、わずか10%のニーズへ向けた英断 “寄せて上げる”が主流の中で“小さく見せる”に舵を切った背景』と題する、児玉澄子氏の原稿。

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 「小さく見せるブラはもともと1人の女性デザイナーの『大きな胸が様々な理由でコンプレックスになっている。それを解消できるブラが欲しい』という提案を基に、2010年に発売された。4カ月の販売計画2000枚を大きく上回る6200枚を売り上げ、翌年から全国で店舗販売の定番商品になった」という内容。詳細は本文を読んでいただきたいが、「変革に挑む老舗」を感じた。

 翌11日には共同通信が『ワコールが早期退職募集 収益力向上へ250人』とする配信を目にした。コロナ禍の「在宅勤務・外出自粛」の影響で2021年3月期が「18.5%減収、営業損失11億1600万円」となって以降、暫くチェックを怠っていた。現状は・・・

 前3月期は「13.6%増収、50億1300万円の営業利益計上、10円の復元増配50円配」と回復基調。今期はIFRSの任意適用で前期と単純比較は出来ないが、「売上高2050億円、営業利益65億円、30円増配80円配」計画で立ち上がった。この限りでは「着実な回復」を感じた。

 だが11月11日、件の共同通信電が伝えられた当日「通期予想修正」を発表した。「売上高を2050億円から2000億円」「営業利益を65億円から80億円」「純益を55億円から80億円」。ワコールでは理由をこう説明した。

 「売上の下方修正は、経営環境を下半期以降も厳しさが継続すると見込んでいるため」とし、営業利益の上方修正は「固定資産の譲渡及びその他収益の計上に伴い、約30億円を計上する見込み」とした。純益については「持ち分法適用会社の好調」。

 経営環境が依然厳しい中で「先々を見据え財務等体質の改善、人件費減に手を突っ込んだため」と、前向きに捉えるべきだろう。

 が、ワコール自体が指摘するように「少子化(先々の需要減)の流れにある。かつインナー関連業界が競争状態に晒されている」のは事実。ある種、端境期。

 一方で株価は、3月の年初来安値1687円から右肩上がりに推移し、11月11日には2440円と年初来高値を更新し高値ゾーンで推移。IFIS目標平均株価は2900円。投資姿勢としては予想税引き後配当利回り2.6%を享受する構えで・・・ということになろう。

 2025年3月期に向けた新中計目標「売上高2200億円、営業利益165億円」を達成するには、「ECによる海外成長」もさることながら、「国内環境の脱厳しさ」が必須条件となることは断るまでもない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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