火星探査機インサイト、間もなく活動終了へ NASA
2022年11月2日 20:49
NASAは1日、火星探査機インサイトについて、まもなくその活動を終える段階に入りつつあることを発表した。エネルギー供給源であるソーラーパネルが、火星での風によってもたらされた塵の堆積によって、発電量が減少し続けているためだ。
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NASAによれば、インサイトに残された時間はあと数週間程度と見込まれる。この残された時間に限られたエネルギーで可能な観測課題を絞り込み、最終段階では、蓄積された膨大なデータを保存し、世界中の研究者がアクセスできるようにしておくことが必要となる。
インサイトは、2018年5月に打ち上げられ、同年11月の火星着陸以来今日までの約4年間に渡り、火星探査を継続し続けてきた。その間に収集、蓄積された火星の磁場、気候、地震活動等の観測データは膨大な量に上る。
なかでも地震活動については1300回以上の観測を行い、最大規模の地震がマグニチュード5にも及ぶことが確かめられている。これらのデータは火星が死んだ惑星ではなく、現在も活発に活動を継続している惑星であることを証明しただけでなく、今後、火星の地殻の構造に関する様々な考察を可能にしてゆくことだろう。
インサイトのミッションにより、NASAが保有する地球以外の天体における地震観測データは、月と火星の2つが揃うことになった。地球の地震観測データと併せて、それぞれの天体の成り立ちの違いや共通項などについて今後数十年間に渡って、様々な考察を深堀していくために、世界中の科学者たちの研究に役立っていくことだろう。
塵も積もれば山となるということわざがあるが、インサイトの太陽光パネルに積もった塵は約4年間で、火星での観測継続を困難たらしめた。だが、その間に得られたデータは人類の科学発展のためにはかけがえのない価値ある情報となった。
インサイトという観測ロボットが得たデータのバトンが、近い将来世界中の科学者に手渡されていく。今後、どんな新発見がこれからもたらされるのかが楽しみだ。(記事:cedar3・記事一覧を見る)