資本の論理にもめげない:レノバの今期「895%営業増益」を読み解く
2022年10月19日 08:28
レノバ(東証プライム)。再生可能エネルギーによる発電、発電設備の開発・運営を手掛ける。エネルギー問題の今後を考える時、注視に値する企業である。
【こちらも】株価も味方する再生エネ発電事業、レノバの実態
過去に2度、企業・産業欄に投稿した。『株価も味方する再生エネ発電事業、レノバの実態(2019年2月27日)』『レノバの株価動向が示す、洋上風力発電本格化の号砲(20年12月21日)』。改めて今回レノバを覗いてみたいと思ったのは、前期と今期計画の凄まじいまでの営業利益の変化を確認したからだった。
前2022年3月期は42.1%の増収も「81.0%営業減益、86.3%最終減益」。対して今3月期は「21.5%の増収(355億円)、895.1%の営業増益(87億円)、83.4%の最終増益(29億円)」計画。そして開示済みの第1四半期は既に「85億2500万円、61億900万円、46億3700万円」を計上している。前期の大幅減益の理由は何だったのか。レノバではどう説明するのか。
確認して、正直言っていささか腹立たしさを覚えた。前期の大幅減益が予想通りだったからだ。
レノバは「秋田県由利本荘市沖」の洋上風力案件で、政府の公募入札に応募していた。が、2021年末に落選。他の2海域での公募入札同様に、三菱商事企業連合が落札した。何故か。22年1月20日の日経電子版は「記者の目」欄で、こう記している。
「(東北電力などと連合を組んだ)レノバは『事業実現性』では最高点を取った可能性が高い。ところがもう1つの評価軸『売電価格』が高く、コスト削減を見越して割安な提案をした三菱商事連合に勝てなかった」
ある種の「資本の論理」に敗北した。レノバの前期決算書類のどこにも、そうした記述は見受けられない。だが具体的な数字の記載こそないが、件の公募案件で選定されなかった結果として「合同会社に対する当社の出資持分に対する損失の計上及び関連する費用等を計上した」とある。
「れば、たら」を記しても仕方ないが、先の日経の記事には、「レノバの企業連合への出資比率を50%、入札した売電価格を24.5円と仮定すると、20年間の売電収入は約9975億円。対し286億円(22年3月期の売上想定額)を失った計算になる」とある。
だが前期決算後に確認すべくレノバに問い合わせても「損失、費用の計上・・・」としか答えは得られなかった。今期についても決算資料の「今後の見通し」で公にされていた「運用計画向上、建設計画」の話しか得られなかった。
が、こう説明は受けた。「太陽光・バイオマス発電を基盤に、陸上風力・地熱などの積み上げ、内外展開の拡充を図る。国内の洋上風力発電市場に若干の変化は捉えているが、先々の成長を見立てている」。
2017年2月に上場した若き「再生エネルギー」の旗手からは、今後とも目を離せない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)