探査機インサイト、火星での隕石衝突による地震波を初検出 NASAジェット推進研究所ら
2022年9月21日 11:24
火星と木星の間にはアステロイドベルトが存在あるため、火星には地球よりも多くの隕石が飛来していると考えられている。また火星の大気は地球と比べて非常に希薄で、大気圏突入後に隕石が焼失する可能性は地球よりはるかに低い。そのため火星での隕石落下観測は地球と比べて容易だ。
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NASAのジェット推進研究所は19日、インサイト着陸船が火星における隕石落下の地震波を初めてキャッチした発表した。
インサイトは2018年11月に火星に着陸して以降、これまでのミッション遂行期間中に1,300回以上地震波を検出している。2020年と2021年の2年間で隕石落下に起因する地震波は4件あり、いずれもマグニチュード2.0以下の小規模地震に相当していたという。
隕石による地震波は、大気圏突入時の衝撃波(音響波)も伴う。つまり、地震波と音響波の両方のデータ解析で、地震波を隕石によるものかどうか識別が可能になるのだ。
地震波と音響波のデータは隕石軌道や落下地点の推測にも役立ち、火星上空を周回している衛星(マーズ リコネサンス オービター)により、隕石落下地点と考えられる上空の写真撮影を行い、クレーターの有無も確認している。結果的に規模が小さく衛星写真からは厳密にクレーターの確認はできなかったが、衝突痕と思しき暗点は確認できたという。
これまでの研究を通じて科学者らは、火星における隕石衝突頻度が少ないことに疑問を持っている。今後さらに詳細な解析を進めていくことでより、小規模の隕石衝突による信号検出の可能性はあると考えているという。
だがインサイトでの観測のエネルギー供給源となっているソーラーパネルには、時々刻々と火星における塵の堆積が進行している。2022年10月から2023年の1月にかけて、電力供給が困難になるため、限られたデータ収集可能期間を有効活用していく必要があるだろう。
なおこれら一連の研究に関するフランスのトゥールーズ高等航空宇宙研究所、米国ブラウン大学らの共著の論文は、2022年9月19日にNature Geoscience に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る)