医療器具に経営資源集中を宣言のオリンパス、外国人投資家保有比率51.5%を噛みしめたい
2022年9月12日 15:52
オリンパス(東証プライム)が顕微鏡事業を、米投資ファンド:ベインキャピタルに4276億円で売却すると発表した。オリンパスにとって顕微鏡事業は、創業者:故山下長が1920年に開発した国産初の顕微鏡(旭号)に代表される祖業。100余年の歴史に幕を閉じる。顕微鏡事業の売却をオリンパスでは、「医療機器分野拡大の経営資源集中のため」としている。
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オリンパスの医療機器事業の歴史も長い。1950年には世界初の「胃カメラ」の実用化に成功している。更なる成長ステージに立つことを英断した結果だ。
現状で同社の医療機器の代表選手は、消化器内視鏡(内視鏡)。オリンパスは世界市場の7割を有している(富士フィルム、ペンタックスを含めると9割超)。柔軟に曲がる管を患者の口or肛門から挿入し、胃や大腸など臓器の内部を観察。ビデオスコープシステムでモニタ画面の映像を見、必要に応じ治療も出来る。
私も「腸閉塞」の疑いで入院した折り大腸の内視鏡検査を受けた。「0・05ミリ程度のポリープはあったが切り取る必要はない」と告げられ、「凄い時代になったな」と痛感した。オリンパスのIR担当者から、「内視鏡の構造自体はシンプル。だが特許とノウハウの固まり。特許件数は当社製品が一番多い」と聞いた。
各種データを見ると、こんな事実が浮上する。「大腸がんの羅漢者数190万人(GLOBOCAN2020)」「大腸内視鏡件数5000万件(主要先進国2019年)」。こうした状況下、オリンパスでは「羅漢数の多い肺がん・胃がん・大腸がん・前立腺がんの治療機器を開発」「適用可能な100の疾患に医療機器を提供」している。
収益動向は2022年3月期の「18.9%増収、87.7%営業増益、792.8%最終増益、2円増配14円配」。対し今期も「11.4%増収、33.9%営業増益、33.1%最終増益(2期連続最高益更新)、2円増配16円配」で立ち上がり、8月9日に「11.8%増収(1兆190億円)、50%営業増益(2310億円)、48.3%最終増益(1720億円)」に上方修正した。
医療機器分野への軸足移行は、既に前期決算からも確認できる。総売上高に占める内視鏡・治療機器(低侵襲治療機器)分野は売上高で85%、営業利益で61%を占めている。
株価も「医療機器への経営資源集中」&「上方修正」を好感している。時価は3000円トビ台水準。8月25日の年初来高値:3148円ゾーン。IFIS目標平均株価3670円。外国人投資家の持ち株比率:51.5%も頷ける。(記事:千葉明・記事一覧を見る)