ダークマターの謎に迫るいて座矮小銀河からのγ線放射検出 東大らの研究
2022年9月7日 08:14
宇宙を構成する物質のうち観測可能なものは、全ての質量を足し合わせても、全宇宙質量の5%にしかならない。宇宙には人類が観測できない謎の質量がまだ95%もある。この95%に相当する存在が何なのかは、見当がついていないわけではなく、ダークマターとダークエネルギーがそれにあたると考えられている。
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ダークマターは、銀河の運動に、観測の網にかかる物質の質量だけでは説明できない挙動があるため、その存在が確実視されているものだ。ダークエネルギーは、宇宙の膨張速度が一定ではないことが判明したことから、宇宙の膨張に寄与する謎のエネルギーがあるはずだと、科学者らが考えている存在である。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU) は6日、2010年に発見されたフェルミバブルの発生源について、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡による観測から、いて座矮小銀河の中性子星の集団から入射した高エネルギー電子・陽電子対による、宇宙マイクロ波背景光子の逆コンプトン散乱であることを突き止めた発表した。
フェルミバブルは、銀河系中心において、発生源が不明の強いγ線を放射する巨大な泡状構造だ。かつては、銀河中心にある超巨大ブラックホールが、過去に大爆発したことに起因するものと考えられてきた。
フェルミバブルの発生原因は2つの可能性が考えられており、1つは未知のミリ秒パルサー集団の存在、残る1つはダークマターの消滅によるものだった。今回の研究では、原因は前者であることが判明し、ダークマターの存在を確認するには至らなかった。
だが、従来運動が緩やかと考えられてきた矮小銀河の運動は、実は非常に活発で、その活発な運動をもたらすダークマターの消滅現象を探索するターゲットとして、矮小銀河が再認識された形だ。加えてそれと紛らわしい事象例を抽出できたことで、今後のダークマター探索の重要な道しるべを示すこととなった。
今回の研究は、Kavli IPMUやオーストラリア国立大学などの国際共同研究チームによるもので、その成果は、天文学専門誌「ネイチャー・アストロノミー誌(Nature Astronomy)」に、9月5日付けで掲載された。(記事:cedar3・記事一覧を見る)