自社の正社員をエンジニアとして派遣する、メイテックのビジネスモデル
2022年8月30日 07:50
自社の正社員をエンジニアとして派遣するメイテック(東証証プライム)に最初に関心を抱いたのは、1996年。上場も果たしていた創業者社長の関口房朗氏が、解任された時だった。4代目社長となった西本甲介氏(社長室長・人事部長として関口氏に仕えた)が、解任に至る経緯を語った記事に接した時である。詳細は2011年6月7日配信の東洋経済オンラインに譲るが、起業家・創業者に否定しがたい「属性」を垣間見た気になった。
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だがいまのメイテックを語る時、前記は「過去の出来事」と考える。メイテックで着目すべきは、ビジネスモデルである。会社四季報の特色欄を借用すると、『正社員技術者を派遣。機械・電子・半導体など設計・開発中心・・・』とある。「正社員技術者の派遣」は人材派遣業者の世界では、他に例を知らない。
収益動向は好調。前2022年3月期の「10.9%増収、25.2%営業増益、31.6%最終増益」に続き、今期は「11.1%の増収(1190億円)、20.1%の営業増益(154億円)、13.6%の最終増益(105億円)」計画。79円配当予定だが22年7月1日を発効日に1対3の分割を行っており実質増配。
メイテックの事業セグメントは2つ。前期実績を例にすると・・・
『エンジニアリングソリューション事業』: 総売上高の9割超を占める。中核事業はエンジニア派遣事業。稼働人員数の増加や時間外労働(稼働時間)の回復で、21年3月期比10.7%の増収/23.9%の営業増益。
『エンジニア紹介事業』: グループのメイテックネクストによる、エンジニアに特化した職業紹介事業。紹介決定数の増加により25.8%の増収、73.1%の営業増益。
さて、展開事業の中にあって特色である「正社員技術者派遣」をどう捉えればよいのか。IR担当者に問い合わせた。こんな風に説明してくれた。
「当社の(中核事業である)エンジニア派遣の、全員が(当社の)正社員派遣。当社の正社員雇用で派遣先企業に就労する。エンジニア社員には当社が給与支給をする。派遣先からは業務のアウトプット(成果)に対する対価を頂戴している」
ちなみに今年4月1日時点でのエンジニア正社員数は、1万2152人。稼働(派遣)率は研修中の新入社員を除くと4月:97.9%、5月:98.1%。同社を知るアナリストは「メイテックの取引先企業は約1000社、日本のものづくりの前線に6500人以上のエンジニアを送り出している」とした。エンジニアアウトソーシング業界のリーディングカンパニーである。(記事:千葉明・記事一覧を見る)