日医工のADR再生は成るのか!? カギを握るのは営業の最前線に立つ人材の有無
2022年8月23日 15:17
日医工(東証プライム)のADR再生は成るのか。私に本稿を記す資格はないのかもしれない。過去に企業・産業欄に『後発医薬品で世界トップ10入りを掲げる日医工:田村社長の本気度』(2019年1月10日)、『ジェネリック大手:日医工の「海外展開」を見守りたい』(20年7月15日)と題する記事を投稿している。
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新薬大手も後発医薬品大手も、「世界トップ10入り」は大きな命題だ。その意味で拙稿の後者は、2016年に米国の注射剤ジェネリックメーカー:セージェント社を約750億円で買収した際に、田村友一社長の執った行動を知って記した。
田村氏は契約成立直後に、セージェント社のCEOからの「今後とも経営の舵取りは当方に任せてもらいたい」という申し出を、即座に「NO」と応じ14億円の退職金を支払い辞任させた。田村氏は、「受け入れたのでは統制がとれないと直感した。M&Aの後に最も肝心なのは意思の疎通が図られ、会社が一つになることだ」と断言した。
決して間違った施策ではなかった、と今でも確信している。が、前22年3月期に「4.9%の減収、過去最大の純損失(1048億円)」に陥ったトリガーが、セージェント社のバイオ医薬品・慢性膵炎治療薬(注射剤)の承認申請が予定より遅れることから800億円超の減損損失を計上したためと知ると、言い難いものを感じるのも事実だが・・・
詳細は省くが、日医工が富山県から薬機法抵触で業務停止処分を受けた最大の要因は、コンプライアンス違反。「内部告発」が入り口とされるが「不適切な廃棄回避」「安定性試験等の不実施」は、日経クロステック21年3月10日の報道:見出しを借用すれば、『不正指示の工場長が品質担当役員に出世 日医工、利益優先の病根』。無論、田村氏が「自分は知らなかった」で済まされることではない。
果たして今後の展開をどう見るべきか。5月26日の債権者会議で全ての取引金融機関から返済の一時停止で同意を得ている。メインバンク:三井住友銀行が設定した融資枠が公にされている。また事業再生ファンド:ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(政策投資銀行や大手銀行が組成するファンド)から、最大200億円の出資を受けることで基本的に合意している。
前期の決算資料には「今後の事業進捗や金融機関、関係各社との協議、資金調達の状況などにより資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があり、継続企業の前提に関する不確実性が存在する」とあるが、ADR再生の下地は整ったと捉えられる。
ADR再生で復活した企業も少なくない。長谷工然り。コスモイニシア然り。だがそこには共通項がある。前者では辻範明氏(現会長)、後者ではやはり現会長の高木嘉幸氏。上層部が去って行く(辞めていく)中で、胃を痛くする思いで営業の最前線に立った人物である。日医工にそうした人材が居るかいないかが、大きなカギとなろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)