新しい官民連携「ソーシャルインパクトボンド」の、活かし方を考える
2022年8月8日 16:56
ニッセイ基礎研究所が発信するレポートの7月号で「ソーシャルインパクトボンド」への注目が高まっている、と知った。金融研究部:原田哲志氏の『官民連携の新たな仕組み「ソーシャルインパクトボンド(以下、SIB)」とは』と題するレポートで、である。
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SBIは行政(自治体)の「成果報酬型支払い契約」に基づく「民間資金活用」による、官民連携でことに当たる新手法。「民間資金」には、実際にことに臨む運営体の資金に加えて広義の民間資金の応募も含まれる。
アメリカやオーストラリアなど諸外国では既に、実績を積んでいる。具体的には「就労支援」「医療・健康」「再犯防止」「生活困窮者支援」が、主たるマターとなっている。原田氏は、「日本でも2015年に複数のパイロットプロジェクトが行われて以来、自治体での活用が広がっている」と指摘している。
いわゆる従来の「第3セクター方式」では、自治体の費用負担が実現のネックとなっていた。運営する事業者(企業)も費用対効果を勘案すると安易には引き受けられない。対してSIBでは「成果報酬型」「民間からの資金導入」により、リスクに対する分も含め三位の負担軽減が可能になる点がミソ。
では実際に、SIBはどんな分野で実績を積み始めているのか。「自治体通信online」で配信されている具体例でみていく。
★特別養子縁組事業: 横須賀市(神奈川県)がSIBで事業展開を行っている。横須賀市の望まない妊娠に悩む実の親と、市外の養い親希望者のマッチングを図ろうという枠組み。「年間4件以上の特別養子縁組成立」を標榜し始まった。
4件を達成することでもたらされる便利・利益(総便益)は約3460万円、そのための事業費を約1830万円と見積もった。結果、その差額(行政収支改善)1630万円を見込んだ。見込み通りにことが進めば、事業費と成果報酬は横須賀市が後から運営・援助民間に支払う枠組み。
★尼崎市(兵庫県)の就労支援: 尼崎市は支援の申し出をしない「ひきこもりの若者」を対象に、アウトリーチ(出張サービス)による就労支援をSIB方式で行った。運営(事業)は認定NPO法人に委託した。
具体的には生活保護を受給中で就労に至る手前の市内の若者が対象。NPO法人の訪問支援員が市のケースワーカーと協働でアウトリーチを行い、就労支援プログラムへの参加可能な状態まで引き上げていく。年間200名を対象にアウトリーチを行い、結果6名が就労/4名が就労可能な状態に向上することを目指した。目標達成の場合の総便益約1327万円、総事業費約1300万円。行政収支約27万円の改善を見込んで取り組んだ。
こうしたSIBの枠組みでの取り組みを知り、障害者就労支援にも活かせるのではないかと考えた。企業に障害者受け入れを「%」で義務付けるだけが方法ではあるまい!?(記事:千葉明・記事一覧を見る)