120億年前の銀河周辺からダークマターの存在を検出 名大と東大ら

2022年8月3日 17:52

 宇宙で起こる物理現象には、説明のつかないものが多い。例えば、宇宙に無数に存在する銀河の運動は、物質の質量を全て積み上げてカウントしたとしても、うまく説明がつかない。そこで科学者たちは、ダークエネルギーやダークマターという仮想の存在を定義して、それらを説明しようとしている。

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 ウィキペディアによれば、ダークエネルギーは「宇宙全体に浸透し、宇宙の膨張を加速していると考えられる仮説上のエネルギー」、ダークマターは「『質量は持つが、光学的に直接観測できない』とされる、仮説上の物質」と説明されている。

 最新の研究では、宇宙全体の質量構成比は原子などの物質が占める割合は4.9%、ダークエネルギーが68.3%、ダークマターが26.8%とされており、人類が光学的に観測可能な宇宙の構成要素は宇宙全体の約20分の1を占めるに過ぎない。

 名古屋大学は2日、120億年前の銀河周辺において、ダークマターの存在を初めて検出したと発表した。今回の研究は、名古屋大学素粒子宇宙起源研究所と東京大学宇宙線研究所らの共同研究によって行なわれたもので、その成果は、米国物理学会誌フィジカルレビューレターに8月1日付で掲載されている。

 従来、ダークマター分布は背景光源に現れる重力レンズ効果を用いて測定可能とされてきた。だが120億光年の彼方にある遠方銀河のダークマターを測定するには、それよりもさらに遠方にある銀河を背景光源とする必要があり、その数は非常に限られ事実上困難とされてきた。

 今回の研究では、背景光源としてビッグバン直後の宇宙マイクロ波背景放射を用いたことで、遠方銀河のダークマターの検出が可能になったという。

 従来の可視光のみによる観測では、最遠で80億光年にある銀河のダークマターしか観測できなかったが、今回の研究で採用された可視光にマイクロ波を組み合わせる手法により、その距離が120億光年にまで伸びた。その数は観測可能な宇宙視野全体の90分の1となる領域で、150万個にも及び、その領域におけるダークマター分布のマッピングが可能になった。これにより120億年前の宇宙モデルの構築が可能になり、宇宙の進化の謎解明に大きく寄与することが期待される。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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