NASAの探査機、月面のロケット衝突跡を発見 2つのクレーターが連なる
2022年6月28日 11:08
2022年3月4日、月面にロケットが衝突したと様々なニュースで報じられていたが、NASAは6月24日、その際に生じたクレーターの写真を公開した。写真を撮影したのは、NASAの月面探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」で、高解像度のカメラを搭載しており、これまでアポロ計画での着陸船や着陸した宇宙飛行士の足跡などの撮影にも成功している。
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今回撮影された写真は、奇妙なことに直径18mと16mの2つのクレーターが連なった形をしている。過去にロケット衝突によって月面に形成された4つのクレーターはいずれも単一クレーターであり、今回発見されたものは、特殊なものとして認識されている。
2連クレーターが形成された原因は、月面に落下したロケットの構造に依存しているものと考えられる。具体的には、両端に大きな質量を持つ構造であったことが推論されている。
この事実から、ロケットの正体がどこの国のどんなものであったのか特定することは可能と考えられるが、NASAはこれに関する見解を明示していない。一方で、このロケットを最初に発見した天文学者ビル・グレイが、軌道をコンピューターで予測しながら追跡を行っており、彼の見解がネット上で公開されている。
ビル・グレイが公開した情報によれば、当初このロケットは、2015年にNASAの深宇宙気候観測所(DSCOVR)を太陽地球L1ラグランジュ点に打ち上げた、SpaceX社のものと考えられていた。だがこれは誤りであることが判明し、中国の嫦娥5-T1ミッションによるものであった可能性があるという。なお、彼のこの見解が公開された数日後、中国は、嫦娥5-T1のブースターは打ち上げ直後に地球の海上に落下したと発表している。
ビル・グレイの見解が正しい場合、当初疑いをかけられていたSpaceX社のロケットは、いったいどこに行ってしまったのかという疑問が残る。彼は地球と太陽のラグランジュ点L1に留まっているのではと推論している。
月にできた小さな2連クレーターを作った犯人捜しは、お金や労力をかけて行う程、天文学者たちの興味を引かないため、容疑者も犯人もはっきりしないまま終わりそうだ。だが人類のテクノロジーが、月面のクレーターを増加させている現実があることには驚かされる。(記事:cedar3・記事一覧を見る)