宇宙の大規模構造を解明へ 超高速解析アルゴリズムを開発 阪大らの研究

2022年5月31日 16:26

 これまでの観測で明らかとなった宇宙の構造やそれを構成している物質の動きは、質量はあるが光学的な観測で捉えることができない暗黒物質の存在を仮定しなければ、説明がつかない。欧州宇宙機関の最新研究によれば、宇宙に存在しているエネルギーの構成比は、バリオンと呼ばれる従来知られている光学的観測で捉えられる物質が約5%、暗黒物質が約27%、暗黒エネルギーが約68%とされる。

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 宇宙の大規模構造を理解するには、先に示した宇宙に存在する構成要素がどのような相互採用をしているのかを様々な仮説を立て、数値解析シミュレーションで再現し、より観測結果に近い仮説を見出すという地道な作業が求められる。未知の構成要素も含めた物質間の相互作用をすべて考慮した解析となれば、それに要する時間は膨大なものとなる。

 大阪大学は27日、宇宙論的シミュレーションでは10万時間が必要だった銀河間物質のガス分布再現に関して、機械学習により数秒で可能とする新しい数値計算手法を開発したと発表した。

 手法の開発にあたり、銀河間ガス(バリオン)、暗黒物質、中性水素の量のつながりに関して、階層的な関係があることに着目。クエーサーの視線吸収に見られる「ライマンアルファの森」と呼ばれる、赤方偏移のパターンをモデル化するための機械学習的手法を用いたという。

 1年は365日×24時間=8760時間しかなく、従来手法に要していた10万時間は11.4年に相当し、いかにこの種の解析が困難なものであったのかがよくわかる。

 大阪大学の研究者らは今後、この解析手法で数千パターンの仮想宇宙モデルを想定したシミュレーションを実施していく予定だ。様々なパターンの仮説を立てて、その確からしさを検証していく地道な作業だが、このような数値実験が可能になったことは非常に画期的なことであり、これによって宇宙の大規模構造の理解が確実に深まっていくことだろう。

 今回の研究は、スペインのカナリアス天体物理学研究所(IAC)と共同で行なわれ、その成果は、2021年11月と2022年3月に、米科学誌「アストロフィジカルジャーナル」に掲載された。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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