悪い円安 円安差益を差し引いても好調な外需型企業群 (上)
2022年5月16日 16:04
「悪い円安」が指摘されている。原油や穀物上昇にロシアとウクライナを巡る地政学的リスクも加わり、物価が上昇。実質賃金は低下傾向。「個人消費」は不振傾向を変えていない。
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だが残り任期1年の黒田総裁率いる日銀は、3月の決定会合でも「なお緩和を継続」とした。「指値オペで金利上昇を防ぐ」姿勢も変えていない。悪い円安に歯止めがかかる兆しは見られない。円安は輸出型企業に有利。円高は輸入企業の味方。産業の米である半導体に象徴される部材の調達難や主要国の金融動向、更には中国の経済失速感。定性的な枠組みは吹き飛んでしまっている。
が、そうした中でも、円安効果を差し引いても好調な外需型企業はある。「上」「下」で、具体的に捉えてみた。
配当性向60%を掲げるファナック(東証プライム)。FA用NC旋盤で世界首位、かつ産業用ロボット・小型マシニングセンタでも世界で屈指の存在。前3月期「33.0%増収、62.9%営業増益、65.2%最終増益」、そして今期も「12.6%の増収、7.7%の営業増益、7.0%の最終増益」の計画。株価も素直に反映。時価は1万9000円台半ば。だがIFIS目標平均株価は2万6246円と、年初来高値奪還を示唆。
そしてFAセンサなど検出・計測制御大手のキーエンス(同)。前3月期は「51%増収、51%営業増益」、そして今期も「過去最高益更新」計画。売上高営業利益率55.4%。武器は日本市場と同様の「当日出荷」。半導体不足など部材不足の中でそれを可能にしているのが、取引先企業のニーズを把握しきっている営業力。時価5万円強に対し、IFIS目標平均株価は7万4038円。
復興感を強めるキヤノン(同)。前期の155.0%営業増益に続き今期計画も第1四半期開示と同時に「27.7%増」に上方修正。
海外比率は10%台だがミナトホールディングス(同)なども興味深い。産業用メモリー・デバイスプログラマー・ATM用タッチパネルが3本柱。M&A戦略で巧みに成長街道を駆け上がってきている。
浜松ホトニクス(6965)なども健闘組。光電子倍増管で世界シェア約90%。光検出機器関連で高技術を有す。円安が収益を押し上げる環境にあるが兜町を歩くと、アナリストは「それぞれ製品がニッチ市場で高いシェアを占めることから、地政学的リスクにも抵抗力がある」と異口同音。前9月期の「20.5%増収、52.7%経常増益、51.6%最終増益、8円増配48円配」に続き今期も、「8.1%増収(1828億円)、12.3%経常増益(389億円)、13.0%最終増益(283億円)、8円増配56円配」で立ち上がった。そして3月25日に「産業用機器分野を中心の売り上げ増、加えて円安が想定以上に進んでおり・・・」とし、それぞれを「1990億円、493億円、360億円、64円配」に上方修正した。
事業自体の好調は、前期決算からこう理解できる。
『電子管事業』: 医療分野でPCR検査用装置などの需要が内外で伸長。半導体検査装置向け売り上げが海外を主に増加。これを受け半導体ウエハ検査装置向けの光源も増加。
『光半導体事業』: 医療分野でX線CT向けのシリコンフォトダイオードが内外で継続して需要が高まった。産業分野ではイメージセンサ(半導体製造・検査装置向け)や、産業用ロボット向けファクトリーオートメーション分野でフォトIC・フォトダイオードが売り上げ増。
『画像計測機器事業』: 検体検査装置向けボードカメラが北米で継続的な需要増。遠隔病理診療用デジタルスライドスキャナーが欧州中心に伸長。(続く)(記事:千葉明・記事一覧を見る)