時代が求める、誤嚥を防ぐ林兼産業のスティックゼリー開発小史
2022年4月12日 16:21
林兼産業(東証スタンダード市場、以下、林兼)は養魚・畜産用肥料から、ハム・ソーセージ・食肉を中心とした食品の製販を手掛ける業界の中堅。そんな林兼が『少量で80キロカロリーの摂取』が可能で、且つ『誤嚥しにくいスティックゼリー』を開発し販売を展開している。
入り口は2000年の頃に、「やわらかく食べやすいソーセージを作る」ことに挑戦したことだった。IR担当者の言葉を借りれば「これが当社の介護食:まごころキッチンのはじまり」であり、スティックゼリー開発に繋がっていく。
具体的なキッカケは、リハビリテーション病院の言語聴覚士からの「嚥下障害の患者のために、少量で高エネルギーが補給できる『スライスゼリー』を検討して欲しい」という依頼だった。
周知の様に嚥下障害のある患者は食事に時間がかかり、それが精神的負担にもなり食事量が少なくなり低栄養となる。それを解消する手段がスティックゼリー。飲み込む力が弱くなると口腔内には、残留食べ物や細菌が増殖し誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなる。依頼主の言語聴覚士と共同で開発に乗り出した。その過程で介護施設に試験的に提供もした。
そうして開発された(2010年)林兼のスティックゼリーが広く認識され、評価を高めたのは、発売早々の「日本摂食嚥下リハビリテーション学会」の学術総会での附設展示会への出展だった。「1本で80Kcalという点に興味を持たれた」(IR担当者)。以来、学会や様々な展示会への出展や栄養士へのサンプリングで評価が高まっていった。住宅訪問栄養指導でパイオニアだった江頭文江氏の導入事例の紹介も、インパクトを伴った。
商品は原則、問屋からの卸し。在宅患者も購入可能なようにサイト(ヘルシーネットワーク)も整備されている。
改めて、林兼の誤嚥リスク対応商品と他社製品の差異を聞いた。以下の様な指摘が返ってきた。
★スライスゼリーが作りやすいように、スティックタイプ(飲み込む力が弱まった人向け考えた)としている点。短冊形で、噛まずに丸飲みが可能。喉の奥に残らず飲み込んだ後のムセの予防にもなる。
★カロリーは業界NO1。しかもタンパク質が含まれていないので、タンパク質制限の患者のエネルギー補助食品としても活かせる。
「まごころキッチン」には新たに『やわらかマルシェ』がラインナップに加わった。調理が簡便な成形済で、舌でつぶせる柔らかさ。常食に近い見た目も再現されている。
誤嚥性肺炎が懸念される高齢者や病人に、食しやすい商品の需要は高まろう。(記事:千葉明・記事一覧を見る)