11期連続増益計画:ヒューリックの株価下落は、大型増資が原因とされる疑問
2022年4月7日 16:22
ヒューリック(東証プライム市場)の「利益動向」、そして「株価動向」が極めて興味深い。都区内中心の駅近ビルの賃貸事業が主軸。
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まず利益だが、前2021年12月期は「31.6%増収、13.8%営業増益、9.3%最終増益、3円増配39円配」と(営業・経常・最終とも)10期連続増益となった。そして今期も「6.2%の増収(4750億円)、7.4%の営業増益(1230億円)、7.8%の最終増益(750億円)、1円増配の40円配」と、11期連続増益計画で立ち上がった。まずは連続増益の背景を、前期決算から確認したい。
★「不動産事業」: 賃貸事業では、都心23区軸に約260件の賃貸物件(132万平方メートル)を展開。また新規物件の取得にも積極的に動いた。リクルート銀座8丁目ビルをはじめ、10物件を取得している。開発・建て替えでも5物件が竣工している。更には開発用地として、10カ所を取得している。販売用不動産では14案件を売却、2案件を取得している。結果35.5%の増収(4267億1100万円)、13.7%の営業増益(1312億4500万円)。
★「保険事業」: 代理店契約を、内外の損害保険会社と結んでいる。法人取引が主体。決して良好な環境下ではなかったが、6.5%の増収、18.7%の営業契約。不動産オーナーとの結びつきが「力」となっている。
★「ホテル事業」: 連結3社が「THE GATE HOTEL」「ふふ」「ビューホテル」シリーズを展開。コロナ禍のもと5.7%減収、79億5500万円の営業損失。
不動産事業の伸長が、ホテル事業の不振をカバーしての10期連続増益という次第だ。
株価動向は、こうだ。昨年9月14日の昨年来高値:1412円から今年3月8日の982円まで30%近い下落となった。本稿作成中の時価は1100円台。11期連続増益予定企業としては、尋常でない下落である。何故か。
要因は昨秋に実施した大型増資。公募・第3者割当で1150億円余を調達した。いわゆるEPSの希薄化(約12%)が起こった。前にも触れたが私は、「増資=EPS希薄化=値下がり」という一律的な動きに疑問を禁じ得ないものを覚えている。
確かに自社株買いが「株主還元策」にカウントされるいま暴論かもしれないが、「なんのための増資なのか」が勘案されて然るべきではないか。
ヒューリックでは調達資金の使途とし「620億円余を投じ、耐震性強化のビル開発や建て替えを図る。保有施設の再エネ活用の自家発電建設に充てる」等々としている。「新たな成長の礎を築く投資」は果たして、投資家にとりマイナス要因なのだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)