家事代行業:CaSyが上場、その足跡を辿る

2022年3月8日 07:42

 企業・産業欄で何回か、家事代行業で日本経済新聞が「次世代のユニコーン企業候補」に選択し期待されているCaSy(カジー)を取り上げてきた。直近でいえば昨年8月17日に『掃除人も、「資格の時代」が訪れるのだろうか!?』と題する記事を投稿した。

【こちらも】掃除人にも、「資格の時代」が訪れるのだろうか!?

 カジーと一般社団法人:日本掃除能率検定協会がコラボし、検定5級以上に合格した人は合格から3カ月以内にカジーのキャスト(掃除代行者)として働き始めると、受験料の半額がキャッシュバックされるという内容。技術を伴ったキャストを集める上で、カジーにとっては絶好の枠組み。この会社「只物ではないな」と改めて痛感した。

 そんなカジーが2月22日、東証M市場に上場を果たした。私がそもそもカジーに興味を持ったのは、現CEO加茂雄一氏とCFO池田裕樹氏の男性2人が立ち上げた起業という点だった。

 出身大学も社会人として第1歩も異なる2人が出会ったのは、グロービス経営大学院。2人とも「世の中の役立つことをやりたい」というスピリットを持って入学した。そして共に卒業間近の3カ月間、ビジネスプランを作成するクラスを受講した。そこで席を同じくしたのが、出会いだった。

 男性と女性なら「赤い糸で結ばれた」と記すが、2人の出会いは「天の配剤」としか考えられない。共に議論し「これは」と思う「案」を提案したが、教授からは「ノー」の連発。加茂氏は「もっと簡単な枠組みで、本当に生活者が“便利だ”と受け入れるプランを・・・と突き返され続けでした」と振り返っているが、結局2人が知恵を振り絞って生み出したのが掃除代行にはじまるカジーだった(2014年)。

 「料理代行」「ハウスクリーニング」「整理収納」、そしてコロナ禍に対応すべく「除菌清掃プラン」とその業務範囲を広げている。上場時点で、東京・神奈川・千葉・埼玉・京都・大阪・愛知・兵庫エリアで展開。顧客数約13万人、登録しているキャストは約9000名。

 加茂氏は「お客さんとキャスト双方の手間を省くことが肝心」と強調しているが、それは顧客・キャストを結びつける枠組みの巧みさに象徴されている。

 具体的にはマッチング・プラットフォーム方式。サービスの実施以外は、オンラインで完結できる。依頼人はその内容を投げる。地域等を勘案しキャストが「よろしく」と返す。サービス終了後に顧客から料金が支払われ、キャストに委託料金が支払われる。

 20年12月24日には『マッチングサイトを犯罪の温床としない為に、家事代行仲介のカジーが打った策』、21年3月26日には『家事代行マッチングサイト運営するCaSyの加茂代表に「脱犯罪の温床対策」を改めて質した』を投稿した。キャストの質もさることながら、例えば顧客が「反社会的勢力」に属すこともありうる。そうした問題にどう対応しているのか、を加茂氏に問うたのである。

 Zoomでの取材だったがPC画面の加茂氏は「このビジネスを展開する上の問題点を1つ1つ潰してきた。不十分な点もある。今後とも確実に潰す方法を求め続けていく」と真摯に語ってくれた。

 既に今回の上場の計画が進められていた時期だと思う。が「不十分な点も・・・」と正直に話した。見守りたい上場企業が、1社が増えた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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